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坂の上の雲の日本海海戦を見て

司馬遼太郎の名作「坂の上の雲」がNHKで再放送されている。
こうやって再放送していても色褪せない作品だ。

俳優さんも結構物故者が多くて・・・・日本海海戦の東郷平八郎聯合艦隊司令長官役の渡哲也さんも、今はもういない。

日本海海戦のシーンで「天気晴朗なれども波高し」の有名な秋山真之参謀の電文について解説されていた。

聯合艦隊は旅順港陥落後、旅順港の封鎖を解き艦艇の修理を行い猛訓練に明け暮れた。

特に艦砲の射撃訓練は激しかった。

しかし、二百三高地で「弾が無い」と再三要求しても弾切れであったのに、海軍はそんなに射撃訓練する余裕があったのか?と思う人もいるかも知れない。

射撃訓練では当然実弾を使った訓練をする。
砲弾だって安く無い、今も昔も高い。

だからと言って決戦を前に訓練していない訳には行かない。

なので艦砲の射撃訓練には小銃弾を使っていた。
「そんなことが出来るのか?」という疑問の人もいるだろうが、事実そうしていたのである。

日本海海戦前の鎮海湾における猛訓練で有名なのが「内筒砲射撃」である。

艦砲射撃に限らず戦車砲も小銃射撃も照準ということが重要であり、これが正しく出来ていなければ如何に射撃の諸元が正確であっても命中弾は得られない。

照準の第1歩としての極く基礎的なやり方については 「照準発射訓練」自衛隊の戦車で言えば「射撃予習」 と称する方法により、弾を撃たなくても教えることはできる。

しかし、照準を担当するのは砲の引金を引く 「射手」「砲手」 ですから、やはり実際に弾を撃って照準の善し悪しを訓練していくことが最良であることには変わりはない。

でも艦の日々の業務・訓練において、経済的という理由はもとより実弾射撃をそう頻繁に実施する訳にはなかなか・・・。

実弾射撃をすると問題点もある。

 「砲身命数の問題と実弾消費 (特に中大口径砲)」

 「実弾射撃のためには射撃海域まで出港する必要がある」

である。

「砲身命数」これは今の戦車も同じかな・・・。

そこで、実弾を撃たずに射手や砲手を始めとする射撃関係者を訓練する簡便な方法の一つとして採用されたのがこの内筒砲射撃であった。
戦車では旧軍の戦車で「膅内銃射撃」と呼ばれていたし、自衛隊では腔内砲射撃とも縮射射撃とか呼ばれる。

きっと司馬遼太郎も四平戦車学校で同じ訓練をしていたんだと思う。

小銃口径の内筒砲 を砲の中に入れ、砲と内筒砲の砲軸が正しく一致するように据え付けるものが考案された。

戦車の場合は薬莢型の装置にキャリバー50の銃身を装着して、105mm戦車砲から12.7mm弾を撃っていた。
粘着榴弾の事故後はこういう射撃が行われ、装填手の技量が大きく影響した。
詳しく書くと長くなるので割愛するが、経済的にも射撃訓練は高くつくので、こういう代用をする射撃訓練を日露戦争の日本海軍も現在の自衛隊も行っているのだ。

実際、ドラマでも描かれているように世界でも無敵艦隊と称されるバルチック艦隊に完全勝利、圧勝したのである。

東郷平八郎元帥の有名な言葉に「百発百中の砲一門は百発一中の砲百門に勝る」というのがある。

この言葉は猛訓練の中で勝利した実感だったのだと思う。

今も昔もそういう工夫をして猛訓練をして兵隊を鍛え備えなければ、弾だけあっても勝てないし、どんなに素晴らしい装備があっても意味がないのである。

「坂の上の雲」を見てそう思った。

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戦車兵
チップありがとうございます!!無理なさらず御覧頂けたら幸いです。