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戦車から見える光景
戦車に乗っても立場、つまり補職で見え方が全然違う。
砲塔の上から見える風景と、砲手席から視察装置越し、照準眼鏡越しから見る光景、車体の操縦席から見える光景もまた全然違うものである。
砲塔の上から見る光景は壮観だよ。
戦車の動きも一望できるし、高い位置から見えるからね。
私が装填手として初めて別海の矢臼別演習場で演習をした時の夜空は生涯忘れないだろう。
74式戦車であの日本一広い演習場を夜間行進していた時に一面星空といったら・・・・・物凄く美しく一晩に流れ星幾つ見ただろうか・・・。
北海道大演習場は街の灯りがあって札幌方面は一際明るく、千歳方面、恵庭の街の灯りがあって決して真の暗闇ではない。
矢臼別演習場は真の闇があった。
星明りが素晴らしく美しい。
同じ矢臼別演習場で操縦手として参加していた時、夜間行進中に車長が「バンビだ、バンビ」と車内通話で突然叫んだ。
「バンビ?」と思い左横を見たら鹿の群れのシルエットが見え、小鹿の白い尻を振り振りしながら戦車を追いかけるように駆けて行った。
操縦するというのは常に道路の状況や進路を考え状況判断をする。
不整地の操縦は砲口を地面に突き刺さらないように、カメにならないようにと考え操縦する。
景色を楽しむ暇はない。
砲手席だと外を見て乗っていると酔う・・・。
狭い戦闘室の中で・・・・・。
車長は常に指揮をするので立ちっぱなしで、雨が降ろうと冷たい風が吹こうと凍てつく冬に雪が石礫のような氷が顔に当たろうと車長席から顔を出して指揮をしなければならない。
夏は灼熱の中で陽に焼けながら砂塵を被り、冬は余りの寒さに鼻水を流しながら顔を赤くして戦車に乗る。
景色を楽しむ暇なんてないだろう。
戦車に試乗する人とは同じものを見ていても全く違う世界を見ているのが戦車乗りなのである。
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