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刑務所怪談「不動明王の入れ墨」

刑務所に入っていたNさんから20年くらい前に聴いた話。

Nさんは元神主であった、元々居た大きな神社で禰宜から50歳の時に「栄転」して北のある島の神主として赴任したが、現実は左遷のようなもので給料というのか収入が半減して生活に困窮してしまった。

子供が大学へ進学するのにも学費は払えそうになく、結局神主を辞めて北海道の第二の都市へ戻って来た。
そこで郵便局に来た老人の貯金通帳と印鑑を「拾い(本人はそう言っていた)」その通帳と印鑑を使って預金を全て降ろした。
「公文書偽造、同行使及び郵便局員を騙したとして詐欺」の罪で逮捕され刑務所へ。

「初犯なら執行猶予付かなかったの?」と質問したが「余罪がいろいろあって・・・」どうやら悪さしたのは一つや二つではなさそうだ。
見た目は身体が小さく気の弱そうな年の割には老けた人だった。

外見は悪さしそうな感じはしないのだが、人間見た目じゃ判らない。

Nさん刑務所って嫌なことや怖いことがあっても逃げられないから大変でしょうと聴いた。
「地震や火事になっても逃げられないからね、幽霊が出ても逃げられないし雑居(雑居房 複数の受刑者が入っている)の中には・・・まぁいろんな人がいるからね」と言った。

「幽霊?幽霊が出るんですか?」と聴いた。

「そりゃ出るさ、私は神職だったからね」と言った。
「ただね私よりよく見える人が同じ房に居てね、その人の背中には不動明王の入れ墨が入って居たよ」と語り出した。

その入れ墨をした人はヤクザだそうだ、不動明王の入れ墨をしてから「見える人」になってしまったと言っていたそうで、「ここには獄死した奴が彷徨っている」とよく言っていたらしい。

房の中であったり廊下であったり・・・。

そのヤクザがこんなことを言った「あの若い奴、痴漢とか強制わいせつでパクられたって言っているけれど殺しやってるな」と言い出した。
「毎晩な、あいつの寝ている横に座ってあいつの顔を覗き込むように睨んでる若い女がいるんだ」と言った。

多分だが、その事件は未だ解決していないか、事件化されていないんじゃないかと言っていた。

この記事を書いてNさんのことが気になって実名で検索した。

コロナ禍の頃、ある事件で逮捕された事件の犯人として顔写真と逮捕され警官に連行される姿が・・・・・・郵便局で通帳拾ったというのも嘘のような気がする。

悪い人はみかけでは判らない、そして本当の悪人の正体は幽霊が知っているのかも知れない。


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