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自衛隊怪談の話

怪談好きの私は自衛官時代にたくさんの怪談を聴いた。

特に戦車部隊のメッカ北恵庭駐屯地の隊舎にはよく出て、御札が連隊長要望事項の額の裏の壁に貼られたりしていた。

真駒内駐屯地でも怪談は多く聴いた、全国の自衛隊ではこういう怪談が多く怪談の宝庫なのだ。

旧軍の昔より、営内の軍隊怪談も定番のように全国似たような怪談が多々ある。
戦場でも同様に怪談や怪異は戦争体験者から戦争体験を聴いていると唐突に怪異を語り始めることがある。

自衛隊で怪談のパターンで多いのは自衛官の営内者が生活する隊舎の中で起きる怪異「隊舎編」と、駐屯地の営門出入者の監視と警備を行う「警衛」勤務中に起きた怪異の「警衛編」がとても多い。

隊舎で起きる怪異、幽霊が出たと言っても自衛官の六大義務の一つに「指定場所に居住する義務」がある以上「この居室に幽霊が出るから嫌です」とは言えず、自ら引っ越しすることも許されません。

刑務所や拘置所も逃げられないしという面では自衛隊も同様かな・・・。

それでも引っ越しはある。

意外なくらい引っ越しは多い。
自衛隊は立つ鳥跡を濁さずで、徹底的に掃除をします。
床はワックスをかけピッカピカにするし、当然壁に貼った御札も剥がす。
この御札が中々剥がせなくて・・・しかもかく部屋から出て来るは・・・・・どんだけ幽霊でるんだよ。

隊舎と言っても各部屋で別々の幽霊が居て、隊舎内でもいろんな幽霊の話を聴いた。
昭和の頃は「不寝番」制度が未だあり、私も不寝番勤務になると隊舎内を見回る、すると強烈な線香の匂いがある中隊の事務室から・・・事務室にいる当直に聴くが「お前は知らんでいい」と怒鳴られる始末。
その中隊は殉職者の多いと言われている・・・いろいろあるんだね。

怪談を書こうと思いましたがホラー作家の田辺青蛙さんの文庫本「北の怪談」竹書房刊にも提供しているので、どうか読んで欲しい。
もちろん収録されていない怪談もまだまだあるが・・・。

怪談好き、心霊好きには「事故物件」に住むという人もいるらしいが、そういう方は是非自衛隊に入隊を勧めて下さい。
きっと逃げることの出来ない物件で怖い体験できますよ・・・怖いのは幽霊じゃなく・・・あれですが・・・・・・・・・・・。

そして警衛編。

特別勤務の警衛は旧軍の「衛兵」のことで、各部隊持ち回りで24時間勤務で交代する。

警衛に上番する前は半長靴をピカピカに磨き、戦闘服はしっかりアイロンがけをして上番する。

毎朝ラッパ手の吹奏する速足行進曲に歩調を合わせて行進して警衛所へ向かうのが恒例だ。

申し送りを受けて上番する。

日中は営門出入者の監視をする表門歩哨、裏門歩哨、弾薬庫歩哨等それぞれの持ち場で警戒にあたっている。

問題は夜間だ、複哨または単哨となって動哨警戒する。
外柵沿いを動哨している時、見てはいけないものを見たり聞いたりする。

また、動哨前に古参の隊員が「あそこはよう、幽霊がよく出てな・・・」と怪談を語ってくれるのは旧軍の昔より定番なのである。

動哨中は巡察が周ってくるので誰何をしなければならず、ちゃんと回らないといけない。

幽霊が出る場所があるからと逃げる訳にはいかないのだ。

その辺の話というか警衛編の怪談も多い。
「北の怪談」にも収録さりているし、私が初めて原稿料を貰った「ムー」の「宜保愛子の心霊教室」というコーナーに載ったのも警衛勤務中の怪談だった。
私のミステリー怪談という怪談本には幾つか載っているが、全て本名では載っていない。

心霊スポットを巡る方も多いようだが、そういう人には是非自衛隊をお勧め下さい。

強制的に心霊スポットを深夜歩くお仕事もありますからね。

幽霊がよく出た隊舎の一つが一昨年取り壊されてしまった。

あの幽霊たちどこへ行ったのだろうか?

私より20年くらい後輩とそんな話をしたら、御札一杯出て来ましたから。
「3階の角部屋の・・・」と言うので「半長靴を履いたメガネの幽霊ね、ここは俺のベッドだって言う奴」というと「そうです、そうです」言う。

時代は変わっても居たんだな・・・・。

怪談は自衛隊がある限り無くならない。


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