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戦車と自走砲

よく自走砲を見て「戦車だ!!」と言う声を聴くことが多々ある。
心の中で「戦車じゃねぇーよ」と呟く。
元戦車乗りとしては当然過ぎる当たり前のことだ。

ただし世間一般の人は自走砲を見て「戦車」と思うことには別にしょうがないと思っているし、わざわざ「戦車じゃないですよ自走砲と言う大砲ですよ」なんて誤りを正すことなんて決してしない。

SNSでも自走砲を戦車と書き込んでいるのは珍しくも無く、ミリタリー好きでも自衛隊や軍事一般に興味のない人がそう思っているのもしょうがないと思っている。

ただ「それ戦車じゃないよ、自走砲だよ」と指摘する人に「お!出た出た戦車警察だ」と揶揄する奴はいただけない。
「戦う車なんだから戦車だろ」と暴論を吐く奴は大嫌いである。

自走砲とはそもそも何?ということが大事。

元々大砲や火砲は牽引され「牽引砲」であった。
それを戦車のように装軌車の上に砲を載せ、砲そのものを自力で動かすことが出来るようにしたものを「自走砲」と呼んでいる。

当然扱う職種は日本なら特科と呼ばれる「砲兵」である。
砲兵は戦車兵とは違うのである。

火砲は基本「間接照準射撃」である。
敵前ではなく最前線の遥か後方から射撃するのである。
前方観測員の指示誘導で数十キロ離れた敵に砲弾の雨を降らせる。

一方、戦車の職種は機甲科である。
戦車ににも大砲が積んでいるのだから自走砲だろう?と思うかも知れないが、戦車砲は基本「直接照準射撃」でライフル砲とも言われるが敵を前にして直接敵を撃つ。
敵陣に突っ込み最前線で戦う。

もちろん自走砲も直接照準射撃も出来るし、戦車も間接照準射撃も出来る。
お互い出来てもその訓練はあまりしないけどね。
目的がそもそも違うから。

砲は砲兵部隊のシステムの一部で砲が単独で行動したり射撃することはない。
火砲は集団の一部で装軌車でも装甲がある訳でもなく敵の見える弾の飛び交う最前線にはそもそもいない。

それに比べ戦車は乗員の判断で単車で攻撃もする。
乗員の能力も高く状況判断を迅速にして戦車は行動しなければならないのだ。
遥か後方から戦うのではなく最前線で敵中突破の機動打撃するのが戦車なのである。

戦車には堅い装甲と攻撃力のある戦車砲がある。
なにより機動力があるのだ。

自走砲は対機甲戦闘に耐える装甲は無いし、強力な火砲は歩兵や戦車の前進を妨げる敵を粉砕してくれる。

目的や役目が違う戦車と自走砲だが見た目が似ていてもその役目は全く違い「戦う車だから戦車」ではないのだ。

でも・・・・・・特科の隊員が「俺戦車に乗ってる」とか言っているのをたまに目にする。
特科の隊員が自走砲を一般人に説明するのが面倒だから「戦車でいいや、そのほうがかっこいいし」で「戦車に乗ってる」と言うのだけは許せん!

「特科と戦車一緒にするな!!!!!」と戦車乗りはいつも思うのである。

よくさ、元特科の元自衛官もさ「自衛隊に居た頃戦車に乗っていました」とか言ってさ自慢気に当時の写真見せてさ、写真見たら「自走砲じゃん」っていうのがあってさ、一般人ならともかく自衛隊に居る奴居た奴が自走砲を戦車って言うのは噴飯ものだよね・・・・戦車乗りとい行っても自走砲乗りとは言わないもんな・・・。
特科の方には誇りをもって欲しいなとは思う。


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