99式自走155mm榴弾砲
99式自走155mm榴弾砲は戦後第三世代の自走榴弾砲である。
長身の砲身が特徴的で北海道の師団や旅団の特科部隊に配備されている御馴染みの火砲である。
愛称はロングノーズで略称は99HSPと呼ばれる。
隊員は15榴、SPと呼んでいる。
75式自走155mm榴弾砲の後継車両であり、車体は89式装甲戦闘車の車体を流用し、転輪を上下各1つ加えて延長している。
車体前部の右側に操縦席があり、3基の視察窓が備えられている。
その左側には機関室が配置されており、89式と同じディーゼルエンジンを搭載する。
機関室の上面は、排気口と給油口になっている。
車体後部は戦闘室となっており、その上に日本製鋼所が製作した大型の箱型砲塔が載る。
砲塔はアルミ合金製で、上面左右に昇降用ハッチがあるが、側面にも左右2枚ずつの扉を有する。
砲塔の配置は、右側に前から砲手、車長が座り、左側に装填手が座る。
砲塔後部のパネルはボルト留めになっており、自動装填装置の整備時には取外すことができる。
口径は、75式自走155mm榴弾砲と同じ155mmで、砲身長は30口径から52口径に延長されている。
戦車と異なり砲身にスタビライザー等はなく、当然行進間の射撃は不可能であるため、砲身は停車して射撃する時以外はトラベリングクランプにより固定されている。
トラベリングクランプは2組付いており、全自動で開放、固定の操作が可能である。
駐退復座機構の油圧を制御することで、砲身を後座して格納した状態にすることもできる。
最大射程は約30kmと75式の1.5倍以上に延びている。93式長射程榴弾(ベースブリード弾)使用時の最大射程は約40km。
一時は、散布式の子弾を有する03式155mm榴弾砲用多目的弾も開発され配備されていた。
子弾は成形炸薬であり、軽装甲車輛に対する攻撃力も有し、被害範囲は100m四方とされている。
クラスター弾に関する条約に抵触するため、廃棄された。
自動装填式であるが、装填は任意の角度で行うことができ、砲を一定の角度に戻して装填する必要があった75式に比べて、迅速な装填を可能にしている。
さらに、砲弾のみ自動装填であった75式に対し、砲弾と共にユニ・チャージ式の装薬も自動で装填され、最大で毎分6発以上、3分間で18発以上の発射速度を有する。
一両あたりの調達価格が9億6,000万円と高額なため、年間の調達数は数両に留まっている。
調達した車両のうち2両が2001年(平成13年)に発生した貨物船の沈没事故で海没している。
平成25年度をもって北海道内での換装を終了。
北海道内の師団旅団の特科部隊は99式を装備運用している。
ただし、「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱について」(22大綱)において火砲の定数が400門に削減され、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について」(25大綱)では、300門に削減されたため、全ての75式を更新するほどの生産は行われない模様である。