「親密さ」は、濱口作品で一番好きかも。
【4時間14分】
「親密さ」。濱口竜介監督。2012年。
一つの演劇の舞台が出来上がるまでの、様々な人々の想いの交錯と、
その舞台を丸ごと見せるブロックと、
その後を紹介する短いエピローグで構成されています。
丁寧に丁寧に創られているので、
ということになるのか、何しろ上映時間が長い。
4時間14分ばかり。
あの、テオ・アンゲロプロスの「旅芸人の記録」も長い長いと思っていましたが、
こちらは3時間50分。
「旅芸人の記録」よりも長い尺かー。
(ちなみに濱口監督の「ハッピーアワー」は5時間17分、とのことです💦)
今回はWOWOWにて観ることでした。
【もの凄く緊張感があった】
演出の女性と脚本の男性はカップル。
配役や脚本について、厳しい会話、討論が交わされます。
役者たちは、ENBUゼミナールという演劇と映画の学校の学生さんたち、
とのこと。その卒業制作で撮られた作品だそうです。
だから、スターさんが出てくるわけでもなんでもない。
(「ハッピーアワー」も、そんなスタイルでしたね)
知らない人たちたちの群像劇だったりするんですが、
凄く緊張感があるんです。
ただならぬ、空気が張りつめた映像に見えました。
【空の色が変わっていく様を克明に映し取る】
そのカップルが夜の終わりに、
会話を交わしながら歩き続ける、
長い長いワンシーン・ワンカットの場面があって。
これが素晴らしかった!!
緊急の時のみに停められる場所に車を置いて、
光の移ろいを撮影していたゴダールが、
警官か誰かに咎められた時。
「この消えゆく光を見ろ。これが緊急時でなくて何なんだ!!」
と反論したとかいう、
「フレディ・ビアシュへの手紙」という作品を勝手に思い出しました😁
この夜明けのシーンは、本当に良かったです。
感動的でさえ、ありました。
ただ、歩いているだけなのに…!!
【舞台を見ている観客もまた、映画の登場人物】
で、練り上げた演劇の上演、という運びになるわけですが、
これが2時間を超える尺。
じっくりと芝居を見せてくれます。
詩とか恋愛とか親子関係とかトランスジェンダーとか、
様々な要素が詰まった演劇。
これだけでも面白いのに、
キャメラは、その舞台を見ている観客の表情も、
割と頻繁に捉えます。
それが何とも興味深い試みでした。
図らずも、観客が映画の登場人物になっている、という形。
これは、何だか、とても新鮮でした。
見ている観客の表情も、そのシーンを形作る重要な要素なんですよね。
【濱口作品で一番好きかも】
今まで「寝ても覚めても」「ハッピーアワー」「ドライブ・マイ・カー」
「偶然と想像」「悪は存在しない」と濱口監督作品を観ましたが、
この「親密さ」が一番好きかもしれません。
こんな長い上映時間で、大丈夫かいな? スターさんもいないようだし、
などと思いつつ、観ましたが、
スッと作品世界に引き込まれたように思います。
(流石に、あっという間にエンディングだった、などとは言えませんが😅)
できれば映画館で観たかったかなー。
皆さんも、何かの折に出会うことがあったら、是非!
「親密さ」の濃密な4時間14分を体験してみることをお勧めします!!
【荻野洋一さんの本も、合わせて是非】
私のサッカー仕事仲間にして、映画評論を書く荻野洋一さんの本、
「ばらばらとなりし花びらの欠片に捧ぐ」の中に、
荻野さんと濱口監督の対談があります。
気になった方は、ぜひ、一読してみて欲しいです。
とても興味深い対談でした。