1939年の「土と兵隊」と2024年の「シビルウォー アメリカ 最後の日」
【二つの戦争映画】
1939年公開の「土と兵隊」。
(1939年といえば、アメリカでは「風と共に去りぬ」が公開された年ですか。)
「五人の斥候兵」「五番街夕霧楼」などの田坂具隆監督。
(ともたか。長らく、ぐりゅう、だと思っていた💦
仲間内では、ぐりゅう、とも呼んでいたのかも、ですが)
2024年公開の「シビルウォー アメリカ最後の日」。
「MEN 同じ顔の男たち」「エクス・マキナ」などの
アレックス・ガーランド監督。(「MEN」は、おっかなかった…)
時代は、まったく違うし、主人公が兵隊とジャーナリストという違いもある。
共通点は、どちらも延々と旅をする構造だ、ということでしょうか。
そして、どちらもリアリティとやるせなさを感じさせる。
【牧歌的な行軍? 「土と兵隊」】
「土と兵隊」は国立映画アーカイブにて観ました。
1937年の杭州湾上陸を描いた作品とのこと。
軍部の協力があったとのことで、迫力ある戦闘シーンが見られます。
いや、戦闘シーンと言うよりは、爆発のシーンと言うべきか。
ガチで危ない感じも…。
でも、基本は延々と行軍する、歩いている場面が印象に残るような。
ちょっと牧歌的な行軍、というのか。
まぁ、あの広い中国の大地を歩いて移動するので、
そりゃあ、もちろん大変なんですが。
時代を思えば、戦意高揚映画ということになります。
でも、これで戦意は高揚したのかな?
当時、大ヒットしたというし、
仲間たちや上官と部下との友情物語の側面もあるし、
「悲惨な現実」みたいなものは、あまり描かれないし、
敵兵も、ほとんど姿を表さないし、
リアルなんだけど、リアルじゃない感もあるような…。
当時、昭和14年に、これを観た人は、
「これなら、俺も行っても大丈夫かも?」
くらいは思ったのでしょうか??
火野葦平の原作には、命を助けると約束した捕虜36人が処刑された、
というエピソードがある、とのことです。
そういう場面があれば、サミュエル・フラー監督の傑作、
「最前線物語」みたいになったのかもしれないなぁ、などと思ったり。
中国との戦争真っ只中の時代では、それはあり得ないか…。
主人公と呼んでいい伍長を演じるのは、小杉勇。
優しく人望がある伍長役はハマり役で、
これはさぞ人気が出たことだろうな、と思いましたね。
こんな上官ばかりではなかったことは、色々な証言が証明しているワケですが。
戦後はGHQによって接収され、上映禁止映画になっていた、とのこと。
今回、観ることができたのは、オリジナルに近い153分バージョン。
GHQから戻ってきたものを「返還映画」というらしいのですが、
それに日活で発見されたフィルムを足したりして、この長さになったらしい。
初見が最長版だった、というのはラッキーだったのかも。
しかし、田坂監督の演出は上手い。
戦争ものでも恋愛ものでも人情ものでも、なんでも演出できたんですねぇ。
戦闘シーンの見せ方、迫力の出し方、物語の緩急の付け方。流石です。
その後、田坂監督は広島で被爆したとのこと。なんという人生か…。
【まるで「地獄の黙示録」? 「シビルウォー」】
トランプ、勝っちゃいましたね…。
アメリカの大統領選挙に合わせて公開!!
と言う方針が当たって、結構ヒットしたとのこと。
作戦勝ち??😁
アメリカ国内で内戦が起きたら、さぁ、どうなる??
ということで、その内戦のドンパチを見せるのかと思いきや、
その内戦の実態をリポートしようとするジャーナリストたちの物語でした。
「テキサスとカリフォルニアが西部同盟を結んで政府軍と衝突。」
みたいなことらしいのですが、詳細は、実は、あまり知らせてくれない。
色々と悲惨なことが起こる戦場の実態を、
万華鏡のように見せようという意図でしょうか。
キルスティン・ダンストがベテラン戦場キャメラマン。
初めて、この俳優を良いと思ったなー。
(ラース・フォン・トリアーの「メランコリア」なんて、もう、勘弁して、
という感じだったっす…)
同行する戦場キャメラマン志望の若者にケイリー・スピーニー。
美形が出てきたねぇ、魅力的だな、などと思って観てたケド、
あとで「エイリアン ロムルス」の主役だったと知る。
全然、気づかなかった…。
連邦政府から19の州が、すでに離脱した状態だとか。
陥落寸前と言われている、政府軍。
長らく取材に応じていない大統領に直撃インタビュー&写真撮影のため、
ジャーナリストたち4人が、車で大統領がいるホワイトハウスを目指します。
この構図が「地獄の黙示録」みたいだなぁ、と思いました。
使命を帯びて、闇の奥たる神殿に向かう地獄巡り。
そして、色々な戦争、殺し合い、虐殺にまつわる事象に出会っていく。
まぁ、こちらは誰かに頼まれたワケではなく、自発的っぽいけれども。
目撃するのは、「人間の本性」なのか「人間の恐ろしさ」なのか。
ポスターも、何となく似ているような…(我田引水??(笑))
この4人のジャーナリストたちは、あのカーツ大佐に密着してた、
デニス・ホッパー演じるキャメラマンの末裔ってことになるのかな、
などと後から妄想。
【西部同盟と赤サングラス君と】
テキサスとカリフォルニアの同盟。
主義が違いすぎて、そんなの有り得るのか?
とは思いますよね。
僕の友人は、
「主義が違う、そのテキサスとカリフォルニアの、軍内部での軋轢を描いた方が
面白かったと思うンですよね。ジャーナリストの視線?
そっちじゃないと思うンだよなぁ。」
などと不満そうに語っておりました。
なるほどねぇ。色々な視点があるものです。
そして強烈なインパクトを残すのが、途中で現れる「赤サングラスの男」。
これが実にヤバい。
本当に強烈。で、なんか、実在しそう。怖すぎましたわ…。
「憐れみの3章」にも出演してたジェシー・プレモンスが演じています。
このシーンを観るだけでも、価値があるかも???
しかも、ジェシー、急遽、出演できなくなった役者の代役だったとか??
で、このジェシー・プレモンスとキルスティン・ダンストが、
夫婦だと、後から知る。何だか、色々な意味で凄い夫婦です…。
【ラストシーンが語るもの】
そして、地獄巡りの終焉。
ラストに向かう展開、ラストシーン、スタッフロールが流れる時に示される映像。
すべてが印象的でしたねぇ。
やっぱり、最後に思うのは、
「人間って、怖いなぁ」
ですかね。
何かと考えさせられたりするので、
この作品も観て欲しいな、と思います。
百聞は映画一見にしかず。です!!
あ、そーいえば、音響が凄いので、
この作品、映画館で観ていただきたいですねー。
銃声とか爆発音とか、凄まじいです。
(実物は体験したくない…)
「土と兵隊」と合わせて、目撃してみるのも一興ではないでしょうか。
それにしても。
1939年と2024年。
時が積み重なっても、戦争って、無くならないですね。
マジで、どうすりゃいいのか。