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「墓泥棒と失われた女神」 糸はどこに繋がる?

【不思議な手触りの映画】

アリーチェ・ロルヴァルケル監督。
「幸福なラザロ」の監督さんです。あれは変わったテイストの映画でした。
今回の「墓泥棒と失われた女神」も、ちょっと不思議な手触りです。

イタリアのトスカーナが舞台。
英国人のアーサー(映画の中では、アルトゥールと呼ばれていたような)は、
地下にある、古代エトルリア人の墓を見つける特殊能力(!)を持ってます。
そんな彼は、イタリア人の悪い仲間と墓泥棒をして、
埋葬品を売り捌いて生きている。
しかし、どうやら妻(恋人?)を亡くした過去があるらしくて…。
最愛の人の母とその家族たちとの交流もあるれけど、
妻の姉妹、親戚たちは口うるさい。年老いた母は娘の帰還を信じているらしい。
その家には、謎めいたシングルマザーの居候もいたりします。
(この女性の名前が「イタリア」。結構なキーマンになったり…。)
そんなある日、ものすごく価値が高そうな女神像を見つけるアーサーと仲間たち。
でも、そこに他のチンピラ軍団が横槍を入れて、話はややこしくなっていって…。

【「La Chimera」】

原題は「La Chimera」。「幻想」と言う意味とのこと。
それが「墓泥棒と失われた女神」とのタイトルに…。まぁ、仕方ないか。
アーサーは基本、ショボくれているのですが、
亡き最愛の人のことを思い出す時は、生気を取り戻します。
この幻想のシーンは、とても美しい。
ただ、ショボくれた、訳ありアーサーは、悪夢のような幻想を見たりもする。
この夢とも幻影ともつかないシーンの出現が、不思議な手触りを感じさせる、
と言う仕組みなんでしょうね。

【オルフェウスとエウリュディケ】

最愛の人の面影を追い求めるアーサーの姿には、
ギリシア神話の「オルフェウスとエウリュディケ」を想起させる、
とチラシには書いてありました。
監督は明言してるのかしら?
そのヘンは調査不足ですが、確かに、ちょっと思い起こさせるところがある。
で、
実に印象的な「糸」の登場、という訳なのです。
どこに繋がる糸なのか、誰と繋がる糸なのか。
どんな意味を読み取れば良いのか。
どんな風にも取れるような感じになっていたような。
ヨーロッパ映画の、この「投げっぱなしジャーマン」みたいな表現は、
実は、割と好みだったりします😚
(これは、本当に人によるとしか言いようがない、とは思いますが)

個人的には「ギリシア神話の糸」というと、
テセウス(だったか)がミノタウロスを迷宮で退治する時の
「アリアドネの糸」を思い出しますね。

【アーサーと仲間たち。本当に仲間だったのか】

英国人のアーサーとイタリア人の仲間たちは、本当に仲間だったのか。
どういう腐れ縁で、一緒に墓泥棒をするようになったのか。
あんまり、仲良さそうじゃないしなー。
信用できなさそうな奴等だしなー。
まぁ、アーサーの最愛な人を失った哀しみが深かった、ということなのかもなぁ。
仕方なく、一緒にいたのかな。

【ジョシュ・オコナーとイザベラ・ロッセリーニがイイ!!】

主役のアーサーに、ジョシュ・オコーナー。
「テニス版フランソワ・トリュフォー的三角関係映画」と呼ぶべき、
「チャレンジャーズ」で観ていて、なかなか良いなぁ、と思ってました。
こちらでも「特殊能力を持った哀しみの異邦人」を巧みに演じていました。
彼は、富豪の御曹司役だった「帰らない日曜日」でも良かったものなー。

最愛の人の母の役にはイザベラ・ロッセリーニ。
最初は誰だか分からなかった。
ずいぶん、お年を召しましたが、なんか良い存在感を示していました。
あの「ブルーベルベット」の衝撃のヌードから38年か…。

【で、糸が…】

そんなこんなで、ラストに向けて、糸が意味を発揮していきます。
あら、こんなラスト??
とは、個人的には思いましたが、
これはこれでアリなんだろうなぁ、とも。
頻繁に挿入される、自然を映し撮ったカットが美しくて、印象的でした。

百聞は、映画一見にしかず。
どこかの機会で観ていただきたい映画です。


冒頭でうまくアップロードできていない場合に備えて、ポスターをもう一度、提示しておきまっす。





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Takashi Hashiwaki
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