家計簿
一年の終わりにやることはだいたい決めている。一人暮らしのときはそれなりに、おせちだとか年越しそばだとかを用意したものだが、台所仕事を担っていない今はそんなことはしない。ただ変わらず絶対にするのは私にとっての大行事、「家計簿の締め」である。
本格的に家計簿をつけ始めたのは一人暮らしを始めてからだ。それ以前も金銭管理はきちんとしているほうだったと思うけれど、家計をすべて自分で掌握するようになったときに、ともかくやらねばならないと思って始めた。気づけばもう十年近く続けている。
月ごとにもきちんと締めをして、計算上の額と実際の額の差異がないかチェックしている。何にお金をかけたのか、出費の理由もおおまかに確認する。特に節約に一生懸命になっているというわけではない。ただ自分のお金の使い方で後悔がないかを見ているのだ。そしてあまり後悔したことはないので、自分なりに納得のいく出費をしているのだろう。
年末となると一年の総決算になるわけで、やることは月ごとと同じでも、一年の収支を明らかにする作業だ。一年に使った額を見ると、よくマイナスにならなかったなと思う。今年もマイナスにはならないはずだ。自分の収入に見合った範囲の支出で済ませられているということは、自分にとって安心材料になる。「借金するほどの散財」というのが必ず挙げられるほど、自分の病気なら症状として起こり得ることだからだ。
それに加えて、一年の医療費や嗜好品に使った額などもまとめている。特に医療費はあとから確定申告をするときに必要なのできちんとまとめる。領収書もすべて取っておいて整理する。嗜好品はときに自分にとっての命綱になるので、あまり切り詰めないように緩やかに見ている。普段の家計簿は手書きだが、締めたあとはパソコンでデータ入力してあって、それがもう十年分になっている。区切りがいいので、今年まででファイルを変えるつもりでいる。この十年で収入元も支出先も、次々と移り変わってきた。区切るのに合わせて、項目は来年あたりから安定してくれないだろうかと思ったりする。
そうこうしていれば一年が終わる。賑わしい大みそかに外に出かけていく予定は今のところない。一日家にいて、お金の計算をしてパソコンと向き合って、領収書の袋分けをして、それだけだ。テレビの特番を見ることもないし、いつも通りの生活パターンで年越しを待たずして眠ることになると思う。当日になってみないと分からないけれど。
当時いつになってみないと分からないけれど、と言ってしまうのは、どこかで何かを期待しているような気持ちと、家計簿の締めは年末も年末、最終日三十一日にやりたいという気持ち、そのふたつのせめぎ合いがあって、ちょっとばかり家計簿のほうが勝っているということなので、複雑な思いで年末を迎えている。