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社会人になる前に読むべき本⑦手塚治虫「人間昆虫記」
たまたま関連記事を発見しました
1970年から1971年にかけて秋田書店刊『プレイコミック』で連載。
1970年代、田中角栄「日本列島改造論」の頃と
同じ年代とは思えない現代的な切り口。
令和に読んでも「ああなるほど」と、納得します。
いつの時代も人生は一筋縄ではないんだなと。
14歳のとき、母が買ってきた
文庫本版「人間昆虫記」……
私が生れる10年以上前の作品なのに、
初めてこれを読んで軽いトラウマになりました(笑)
その頃ジャンプ全盛期で
(個人的にはジャングルの王者ターちゃん推しだったが)
ドラゴンボール、幽遊白書、スラムダンクを読みながら、
図書館に並んでいたブッダなども愛読していた14歳の私でしたが、
思春期ながらにそれらとはひと味違う
手塚治虫イズムを感じて惹かれてしまいました。
ちょうど、阪神大震災やオウム真理教「松本サリン事件」
神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇聖斗)など
世間を揺るがす大事件?が起こっており、
私自身も、多感な時期に
自転車で事故に遭って負傷し、10代最悪の時代でした。
その頃、人生はなるようにしかならないので、
予防できるトラブルは避けつつ、
自身の人生をそれなりに謳歌することに
フォーカスすることを学べた気がします。
ウザいネットニュース?を読んで
イライラするのは身体に悪いです。
世間や他人のいい加減な情報に
執着しすぎても時間の無駄なのかもしれません。
……と、どこかの偉人さながらに大言壮語を口にしながら
「大好きなコンビニスイーツを止められない
ダメダメすぎるジャンキーなオレに乾杯!!」
とチーズタルトを頬張り青汁で流し込む。
煙草と酒は止めれても、
スイーツだけは止められそうにありません。
社会人になる前に読むべき本⑦
手塚治虫「人間昆虫記」
社会に出る前に一度は触れておきたい作品として、手塚治虫の『人間昆虫記』があります。この漫画は、天才的な才能を持つ主人公・十村十枝子(とむらとしこ)の波乱に満ちた人生を描いた大人向けの物語です。人間社会の厳しさや欺瞞、成功の裏に潜む影を鮮やかに描き出したこの作品は、単なるエンターテイメントを超えた深いメッセージを持っています。
あらすじ
主人公の十村十枝子は、何をやらせても天才的な能力を発揮する「天才コピーキャット」と呼ばれる女性。文学、デザイン、演劇と、あらゆるジャンルで成功を収めますが、実はその才能は彼女自身のものではなく、他人の技術やアイデアを吸収し、自分のものにする能力に由来するものでした。彼女は成功を手にするたびに周囲の人々を傷つけ、利用しながら社会の頂点を目指していきます。
しかし、その成功の陰には絶えずつきまとう葛藤や代償が描かれ、彼女の人生が純粋な勝利とは言えないことが読者に重く響いてきます。
社会人になる前に読みたい理由
競争社会の厳しさを学べる
社会に出ると、能力だけでなく、適応力や駆け引きが必要になる場面が多々あります。この作品を読むと、人間関係や社会での立ち回り方を考えさせられます。道徳と成功のジレンマを考えさせられる
十枝子の成功の裏には、多くの人の犠牲があります。彼女の行動は果たして正しいのか、それとも道を踏み外しているのか。社会で成功するために、どこまで妥協し、どこで踏みとどまるべきか、考えさせられるテーマが詰まっています。人間の多面性と本質を知る
手塚治虫はこの作品を通じて、華やかな表舞台だけでなく、その裏側に隠された人間の弱さや欲望を赤裸々に描きました。社会に出る前に、人間関係の表と裏を知ることで、自分の生き方を見つめ直すきっかけになるでしょう。
結論
『人間昆虫記』は、単なるフィクションではなく、社会人としての現実と向き合うための貴重なヒントを与えてくれる作品です。その物語の中には、今後直面するであろう困難や葛藤、そしてその乗り越え方が描かれています。社会に出る前の準備として、ぜひ読んでおきたい一冊です。
以下は主人公、十村十枝子(とむらとしこ)
の人物像を深掘りした解説です。
十村十枝子の人物像
1. 天才的な才能とその本質
十枝子は物語の中で「天才コピーキャット」として描かれます。
彼女は他人の才能やアイデアを素早く吸収し、自分のものとして昇華するという稀有な能力を持っています。例えば、小説では文学賞を受賞し、デザインでは巨匠として名を馳せ、舞台では女優として頂点を極めます。そのマルチな才能は表面上は「万能の天才」に見えますが、実は他人の才能を巧妙に盗み取ることで成り立っています。
つまり、彼女の才能の本質は「創造」ではなく「模倣」と「乗っ取り」にあるのです。
2. 魅力的で危険な女性
十枝子は類稀な美貌と知性を兼ね備えています。その魅力は彼女の武器であり、同時に人を操る手段でもあります。彼女は人々を誘惑し、巧みに利用することで社会の頂点を目指します。しかし、その行動は決して純粋な悪女ではありません。
彼女の生き方には「生存のための闘争」という切実な動機があり、それが彼女の計算高さや冷徹さを際立たせています。読者は彼女の行動に嫌悪感を覚える一方で、その執念深さや生き様に共感や敬意すら感じてしまうでしょう。
3. 成功への執着と心の空虚
十枝子は物語を通じて常に成功を追い求めます。しかし、その成功は他人を犠牲にすることで成り立ち、彼女自身も孤立を深めていきます。
・彼女の人生は華やかでありながら、内面はどこか空虚。
・一見して充実した成功者のように見えますが、その心の中には満たされない渇望があり、それが彼女を次々と新たなステージへと駆り立てます。
このように、彼女の成功は達成感というよりも、一種の「逃避」や「執着」に近いものです。
4. 社会の縮図としての存在
十村十枝子というキャラクターは、社会における競争の縮図そのものと言えます。
・他者を出し抜き、利用することでしか成り立たない成功。
・競争社会において、倫理や道徳よりも結果が重視される価値観。
・人間が持つ欲望や嫉妬の象徴としての彼女の存在。
十枝子は、社会における「勝者」の姿を極端な形で体現していると言えるでしょう。それは彼女自身の魅力であると同時に、彼女の悲劇でもあります。
5. 十枝子の矛盾と悲劇性
十枝子のキャラクターには、多くの矛盾が含まれています。
・圧倒的な成功者でありながら、常に不安と孤独に苛まれる存在。
・他人を利用する冷徹さと、時折見せる人間的な弱さ。
・何でも手に入れる能力を持ちながら、真に自分のものにできる「心の安らぎ」は得られない。
こうした矛盾こそが彼女のキャラクターを際立たせ、読者に深い印象を与えます。
6. 十村十枝子が象徴するもの
十枝子は個人のキャラクターであると同時に、現代社会の象徴とも言えます。
・彼女の行動は、成果主義や効率主義に支配された現代社会を批評する視点を提供します。
・成功を追い求める中で見失われる「本当の自分」や「他者とのつながり」をテーマにしており、読者に「幸せの本質」とは何かを問いかける存在です。
まとめ
十村十枝子は、成功と引き換えに多くを犠牲にする複雑で魅力的なキャラクターです。その生き様は美しさと醜さ、強さと弱さが同居する、まさに「人間そのもの」を象徴しています。彼女の物語を通じて、読者は成功の意味や社会の在り方について深く考えさせられるでしょう。
ちょうど、手塚治虫をもう一度読み直して深掘りしたいと
思っていた矢先にこのチャンネルを発見したのは良い出会いでした。