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リーダーズチャレンジの記録~高尾縦走アドベンチャーの巻~
新年度は出会いの嬉しい季節であると同時に、新しい環境へ不安や葛藤を抱きながら様々なことに挑戦していく時期ですね。そんな4月の初旬、有志のボランティアリーダーたちと共に、とある冒険に出かけました。
冒険の舞台となったのは我々の青少年活動でもお世話になっている“高尾山塊”。実は高尾山塊には「高尾山」や「陣馬山」といったメジャーな山々だけでなく、あまり知られていない山や地図には掲載されていないマイナーなルートが数多く存在しています。
今回はリーダーたちの“冒険”ということで「北高尾7summit+南高尾9summitプロジェクト」という名称で、1泊2日かけて高尾にある全16ものピークを越えてくるというチャレンジに挑みました。もちろん、2日分の食糧や住居(テント)は自分たちで担いでね!
今回はチャレンジ企画でもあったので以下のようなルールを設けました。👇
【チャレンジのルール】
○危険個所通過時やティーチングが必要な場合、あるいはインストラクターが危険な状況であると判断した場合を除き、登山中の計画や進路はチーム内で相談のうえ山行を進める。
○スマートフォン・財布は原則回収。(GPSの使用はしない。必要物資は全て担いで行く。)
○宿泊については安全管理上最低でも5時間の睡眠時間を確保する。
○2日目は17:00までにゴールをする。(制限時間が守れなかった場合チャレンジは失敗。)
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今回のチャレンジは神奈川県と東京都の県境を辿る36km。アップダウンの多い山脈が特徴。
計画段階でその総距離は36㎞、総移動時間18時間とかなりのビックチャレンジであることがわかりますね…。さて、今回のメンバーは無事に全てのピークを越えてくることができたのでしょうか!?今回はそんなリーダーたちの大冒険に密着!その記録をお届けしたいと思います。
○オリエンテーション(事前学習・準備)
今回の冒険にあたっては、事前に学習会を設けて、冒険に必要な知識・技術を学ぶ機会をもちました。1泊2日を山の中で安全かつ快適に過ごすためには、「山の中の装備を準備する技術」「山の中を移動する技術」「山の中で宿泊する技術」等、普通のキャンプよりも少し専門的な知識や技術が必要になります。
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○プロジェクト1日目
満を持して始まったプロジェクト1日目。早速、トラブルが…。なんと、集合時間になってもメンバーが集まらない!?
自身の個人装備とチーム全体で持っていく共同装備を、1人60L~70Lのバックパックにメンバーと協力して詰め込んでいきます。事前学習で学んだことを活かしてパッキングしていきますが、なかなかうまくいかないもの。そうこうしているうちに、予定していた1時間を超え…。
遅刻と想定外の準備時間、出だしからトラブルが重なり、残念ながら定刻のバスには間に合わず、1本遅らせての出発。さて、この遅刻がのちにどのような影響を与えてくるのでしょうか…
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事前にパッキング練習したのにうまくいかない…幸先が不安…
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この笑顔がいつまで続くことやら…
電車とバスを乗り継いで、いよいよ登山口に到着。登山口付近でブリーフィングを行い、改めて2日間の目的やハイキング時の役割を確認します。自身の装備や身支度を整えて、いざ出発!
最初はインストラクターの指導のもと、事前学習で学んだことを活かし、地形図とコンパスを用いて踏み跡の少ない山道を自分たちで選択・判断しながら進んでいきます。
初っ端、地形図には載っていない登山道に遭遇。「これ本当に道!?」と言いたくなるような道でも、周りの山の様子(尾根・谷)を観察し、地形図と見比べることで、現在地を把握し、目的地までのルートを確認しながら進むことができます。ほぼ道なき道を進むこと1時間、無事に1座目に到着!
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ここまでインストラクター主導のもと山行が進んでいましたが、ここから先はリーダーたちのイニシアティブで進行します。と、早速道なき道を進む一行…。「なんかおかしい」と気付いたメンバーがすかさず、他のメンバーに声をかけ、地形図と現在地を比較します。
「地形図上だと、本来我々は尾根道を歩いていなければいけない」
「今いるのは谷地形」
「少し北に尾根らしきものが見える」
「来た道を戻ってみる?」
メンバー間でコミュニケーションをとって、意思決定をしていくのも冒険の醍醐味ですよね。
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無事に尾根上の踏み跡を発見!開けた尾根道からは、高尾山塊の綺麗な稜線が見えていました。そしてなんとか2座目も登頂!
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その先を進むとピークが見えてきました。
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その先に進むと、熊笹が覆い茂るエリアに突入していきます。踏み跡がないうえに熊笹が多い茂っていると、もはやどこを歩けばいいのかわからない状況に。あたり一面が熊笹に覆われており、右往左往状態が続きます。
気を取り直して、再度地形図とコンパスを使い、進行方向を割り出します。歩いていくとその先にようやく熊笹の切れ目がありました。その目の前にピークを発見し、3座目に到達!やや遭難気味になった一行も少し安堵した様子(笑)
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コンパスワークを用いて難を逃れました。
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その先を進むと少しずつ道が明瞭になってきました。この冒険の一番の難所である急坂を、ロープを使って登りつめ、無事に4座目にも登頂!
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ロープを使って1人ずつ、確実に登っていきます。
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その先を行くと、かの有名な陣馬山の入口“和田峠”に到着。この地点で時刻は夕方17:30。ここまでの移動時間は6時間。予定していた行程時間がおよそ4時間ですから、遅刻した時間も加味すると既に3時間もオーバー。本日の宿泊地までは、あと10km!?たどり着けるのか!?
和田峠を後にすると、30分程で5座目高尾山塊最高峰の「陣馬山」に到着!既に日は落ちて辺りは薄暗くなり、空がオレンジ色に染まる陣馬山からの夕焼けがとても綺麗でした。と、あまり感傷に浸っている時間はなく…
日が沈めば、山の中は一面真っ暗になり、地形も見えなくなるため遭難やケガのリスクが一層高まります。ここから先はヘッドランプの力も借りて、先を急ぐことにしました。
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暗闇の道を進むこと1時間、稜線から見える市街地の夜景に背中を押されながら、時刻は19:30、1日目最終ピークの6座目に到着!しかし、1日目の本当の勝負はここから。なぜなら、この先淡々とした沢沿いの道をあと7kmも歩かなくてはならないのですから!
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疲労困憊…それでも下界の夜景がみんなの励みになる。
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距離だけであれば、1日目の行程の半分といったところ。
朝7:00から活動しているため、既に行動時間は12時間超え。6座を超えてきたメンバーの体力は限界近づき、アップダウンの激しい登山道により足腰にも悲鳴があがる、まさに極限状態。そこに追い打ちをかけるかのように雨も降ってきました…。残り数kmを、自身の身体に鞭を打って前へ進みます。
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そしてようやく宿泊地に到着!登山口を出発してからおよそ10時間、夜22:00に最後の気力を振り絞ってなんとか辿り着くことができました。しかし、既に時刻は22:00過ぎ、明日のことを考えると一息ついている暇もありません。到着後すぐにテントの設営と遅めの夕食の準備をします。
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夕食を食べながら明日の作戦会議をしました。「ここまで来たら、全ピークを制覇したい」という気持ちがありつつも、ここからの道のり、現在の自分たちの体力、ここまでの歩みのペースを考慮すると、明日のタイムリミットである17:00には到底間に合わない…。ここにきて、前半のロスタイムが大きく響いていることを痛感。話し合いの結果、南高尾全10ピークあるうちの2ピークを削り、タイムリミットまでにゴールを目指す決断をしました。
それでも、タイムリミットいっぱいの計画。どうにかロスタイムを減らせないかと、1日目の山行を振り返ってみました。どうやら前半のロスタイムの原因には、遅刻や道迷いだけではなく、“休憩時間の間延び”も影響しているのでは?というところに着眼。「どうしても休憩時間の楽しい会話は弾んで長引いてしまうもの。それをもう少しコンパクトにできれば、山行にも余裕ができるだろう。」そう意気込んで、明日に備え就寝しました。
果たして今日の反省を活かし、タイムリミットまでにゴールができるのでしょうか…。
○プロジェクト2日目
朝7:00起床、すっかり雨は止み、雲の間からは青空が見えていました。
起床後すぐに、メンバーは素早くテント撤収と朝食準備に分かれて作業していました。昨日の反省点を活かして、朝から役割分担を行い、少しでもロスタイムを減らせるよう努めていました。
「昨日荷物重そうだったから少し持つよ」と、1日目のパッキングで上手に分配できなかった荷物を、メンバー全員で負担を軽減できるように工夫をしてパッキングしたり、少しでも早く出発できるように声をかけあったり、ここに来て、ただ山を一緒に歩く”仲間”だけではない”チームワーク”を感じました。今日のルートを再確認して、宿泊地を後にします。
1日目の山行に比べてメジャーなルートになるため、登山道はとても明瞭。しかし、メジャールート故に分岐が多いのが難しいところ。ただでさえ制限時間いっぱいなので、違う分岐を進めば恐らくタイムオーバー。標識だけに頼らず、ここまで培ってきた地図読みの技術を使いながら先に進みます。そして、桜が満開に咲く7座目に到着!
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昨日の反省を活かし、休憩時間をコンパクトにして先に進みます。大垂水峠を越え、高尾のロングコースとして親しまれている”南高尾セブンサミッツ”という山稜に入っていきます。ここから先は再びアップダウンの連続で、既に足腰に悲鳴を上げているチャレンジャーに試練を与えます。そんな中でも、声をかけあい、励まし合いながら前へ前へと進む一行。そして無事にセブンサミッツの入り口、8座目「大洞山」に登頂!
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8座目を終えたところで、インストラクターより新たな試練(ルール)を与えられました。
「ここから先はインストラクターも離脱します。自力でゴールを目指してください。」
ここまで安全管理上一緒についてきたインストラクターから衝撃の一言。
記念撮影用のスマートフォンと危急時連絡用の無線機だけを与えられ、置いてきぼり状態。ここから本当の彼らだけの冒険が始まります!
タイムリミットまであと6時間。無事にタイムリミットまでのゴールができるのでしょうか!?
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「君たちならやり遂げられる!」そう信じて先に下山します。
今回のゴール地点「599ミュージアム」で、チャレンジャーたちのゴールを待ちます。刻一刻とタイムリミットが近づく中、遠くから大きな荷物を担いだ集団の姿が…!
それは紛れもなく、高尾山塊を制覇してきたチャレンジャーたちの姿でした。なんとタイムリミットまであと10分…。劇的なゴールでした。
インストラクターと別れた後一度道に迷ったそうですが、その危機を自力で乗り越え、2日目に予定していたピークにすべて登頂し、無事にゴールにたどり着くことができました。高尾山塊14ピーク制覇、おめでとう!!
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疲労や足の痛みと闘いながらここまでよく頑張りました。
冒険とは、「危険(リスク)を認知した上で、結果は約束されていないが、自らの力で困難を乗り越えることで広がるかもしれない可能性を求めて、自らの意思で立ち向かうこと」(杏林書院『冒険教育の理論と実践』より引用)
彼らはこの冒険から、何を経験し、何を想い、何を学ぶことができたのでしょうか。自分の強さや弱さ、体力、他人への思いやり、限界突破した時の振る舞い…。きっと、”冒険”という困難に立ち向かったからこそ出会うことのできる”新たな自分”に気付くことができたはずです。
今回のように、教育目的をもって冒険的な要素を体験学習として組織的に行う活動を”冒険教育”と呼びます。冒険教育の中には、達成感や成功体験のほか、自己内省、他人理解、そこから生まれる葛藤など、冒険体験から生まれる成長要素が多分に含まれています。この記事で”冒険教育”を語ると、超大作になりそうなので、また別の記事にして皆さまにお届けしますね!
このような”冒険教育”は、個人の全人的な成長や人格形成を図ると同時に、他人とのコミュニケーションを中心とした良好な人間関係づくりなどに非常に長けた教育手法です。最近では、学校内でのチームビルディングを始め、企業研修やリーダーシップトレーニングなどで使われている手法になります。これから「研修等を考えている」「チーム内のコミュニケーションを円滑にしたい」という方がいましたら、ご相談に乗りますのでぜひともご連絡ください!
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1人ではきっと挫けていたであろうことも、仲間と一緒だったからやり遂げられた。
みんなイイ顔してる!お疲れ様!
記事:若泉わか(ひの自然学校サステナブル レスポンシビリティマネージャー)