百物語84話目「めくれる」(実話怪談)
肉が焼かれてめくれているわけではない。
霊感のことだ。
私が好きな理論に、霊感の強い人と一緒にいると、次第に霊感が開花していくというのがある。
これはたとえば紙を何度もめくっていると、くせがついて、ちょっと浮いたようになり、開いてしまうことと同じだ。
霊感ゼロだった人が、霊感ありの人のせいで、急激に霊感がつくこともある。
これは、そんなお話。
友達がバーベキューをしていた。
そのバーベキュー会場からは、高僧が何かを埋めたという伝説のある山が見える。
で、そのバーベキューの集まりの最中、霊感バリ子さんが何かを感じ取った。
「怖い」
霊感バリ子さんは、霊感ゼロ男くんの手を握る。
すると、それまで霊感なんかまったくなかったゼロ男くんは、近くの池におかしな影が数体いることを感じ取ったそうだ。
けれど、霊感バリ子さんが見つめているのは、そこではない。
暗い夜空に漆黒の稜線を走らせている山。その山腹のあたりを、じっと見つめている。
ゼロ男くんも山の方を見ると、そこにチューブが見えた。
ちょうど高僧が何かを埋めたという伝説のある場所だ。そこから、チューブトンネルが伸びていて、中で細長い人影がチョロチョロと動くのが見える。
人ではない。神でもない。妖怪?まったくわからないもの。
けれど、霊感バリ子さんが、「きゃっ」といって、ゼロ男くんから手を離すと、今まで見えてたものが見えなくなった。
バリ子さんに手をつながれていたときだけに見えたのだ。
あーね。(福岡弁でそうなんだー)
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