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Vol.20 国会議員の協力

2019年5月24日、金融庁が発令した業務改善命令によって明らかとなった西武信金の不適切(不法?)な融資。


<業務改善命令>
第2.処分の理由

当局による立入検査の結果や信用金庫法第89条第1項において準用する銀行法第24条第1項に基づき求めた報告を検証(注)したところ、金庫は業績優先の営業を推進するあまり、内部管理態勢の整備を怠った結果、以下のような問題が認められた。

(1)投資用不動産向けの融資にあたり、形式的な審査にとどまり、不適切な信用リスク管理態勢となっている。

i. 融資実行を優先するあまり、融資審査にあたり、投資目的の賃貸用不動産向け融資案件を持ち込む業者による融資関係資料の偽装・改ざんを金庫職員が看過している事例が多数認められる。

ii. 投資目的の賃貸用不動産向け融資について、融資期間に法定耐用年数を超える経済的耐用年数を適用する場合には適切な見積りが不可欠である中、経済的耐用年数等を証する書面を作成する外部専門家に対し、金庫職員が耐用年数や修繕費用等を指示・示唆するなどの不適切な行為が多数認められる。

https://lfb.mof.go.jp/kantou/rizai/pagekthp027000005.html


さらに、業務改善命令が発令された同日、西武信用金庫から以下の発表がありました。


(注)なお、現状当金庫で把握している計数等は以下のとおりです。
○ 投資目的の賃貸用不動産向け貸出案件を持ち込む業者による融資関係書類の偽装・改ざんを当金庫職員が看過してしまった可能性が高い件数
当金庫の認識では127 件です。そのうち、当金庫が、債務者と面談して調査した結果、何らかの偽装等があったと認められる件数が73 件ございました。その他については、引き続き確認を実施してまいります。

○ 経済的耐用年数等を証する書面を作成する外部専門家に対し、当金庫職員が耐用年数や修繕費用等を指示・示唆するなどの不適切な行為と思われる件数
現存する18 か月間のメールでのやりとりからは258 物件あると確認しています。この期間内の同書面の数との比較では約1 割に相当します。


要するに西武信用金庫自ら不正を認めているのです。


この不適切な行為の問題は


  • 融資期間に法定耐用年数を超える経済的耐用年数を適用する場合には適切な見積りが不可欠であるとされていた

  • 経済的耐用年数を用いた築古物件への融資は、国交省や不動産鑑定士協会もバックアップしていた

  • しかし、ある時期から金庫職員が外部専門家に対して耐用年数や修繕費用等を指示・示唆していた

  • 結果として担保価値に見合わない過剰な融資を反復的に実行していた

  • この不適切な融資を受けた債務者は融資を受けた時点で債務超過で出口なし


私はこの不適切な融資の被害者の一人であると確信し、その被害の回復を求めて活動しています。




弁護士を介して西武信金と交渉を行っていたのと並行して私が個人的に動いたていたことのもうひとつが


国会議員への働きかけ


でした。

とは言え、個人的に繋がりのある国会議員など一人もいません。そこで衆参両院のホームページから金融行政に関連していると思われる複数の委員会のメンバーを確認、そのメンバーの中でも野党議員にのみ、片っ端から

「業務改善命令を受けた西武信金の不正融資で困っているので何とかして欲しい」

という内容のメールを送りました。
なぜ野党議員のみだったかと言うと、与党議員は行政側なので厳しいツッコミができないのではないか?野党のほうが問題を騒ぎ立てるのが得意なのではないか?という安易な発想からでした。
50人以上には送ったと思います。その結果、二人の議員から反応がありました。


お一人はNHK党の浜田聡参議院議員。
浜田議員からは「政府に対して質問主意書を提出してみたら?」というご提案をいただきました。ただし同時に「回答には期待できないけど」とも言われましたが。
それでもやることに意義があるとしてこの話を進めてもらうことにしました。
私がドラフトを作成、それを浜田聡事務所で校閲していただいたのち、晴れて質問主意書として国会を通じて提出されました。


第201回国会(常会)

質問主意書

質問第一五〇号

国がお墨付きを与えた西武信用金庫による不正融資に対する政府の調査姿勢に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年六月十五日

浜田 聡


       参議院議長 山東 昭子 殿


   国がお墨付きを与えた西武信用金庫による不正融資に対する政府の調査姿勢に関する質問主意書

 二〇一九年五月二十四日、関東財務局は西武信用金庫に対して不適切な行為が多数見つかったとして業務改善命令を発した。これを受けて西武信用金庫からも同日、業務改善命令を受けた内容を発表している。それぞれの内容を抜粋すると次のとおりである。

(1)関東財務局発表資料から抜粋
 「投資用不動産向けの融資にあたり、形式的な審査にとどまり、不適切な信用リスク管理態勢となっている。」
 「投資目的の賃貸用不動産向け融資について、融資期間に法定耐用年数を超える経済的耐用年数を適用する場合には適切な見積りが不可欠である中、経済的耐用年数等を証する書面を作成する外部専門家に対し、金庫職員が耐用年数や修繕費用等を指示・示唆するなどの不適切な行為が多数認められる。」

(2)西武信用金庫発表資料から抜粋
 「経済的耐用年数等を証する書面を作成する外部専門家に対し、当金庫職員が耐用年数や修繕費用等を指示・示唆するなどの不適切な行為と思われる件数
 現存する十八か月間のメールでのやりとりからは二百五十八物件あると確認しています。この期間内の同書面の数との比較では約一割に相当します。」
 インターネット上で見ることのできる多数の資料から判断するに、西武信用金庫は二〇一四年ごろから「経済的耐用年数を用いた融資」に積極的に取り組んでおり、その取組みは当時金融庁長官であった森信親氏から称賛され、国土交通省や不動産鑑定士協会連合会もバックアップしていたと承知している。すなわち、本質問主意書で問題としている西武信用金庫による融資を利用したビジネスは、当時としては国がお墨付きを与えるビジネスモデルだと思われてもおかしくない状況であったと考える。
 そこで、以下質問する。

一 今回のような不正融資の今後の再発防止や注意喚起を目的として、証拠の残っていた二百五十八物件の詳細状況について、可能な範囲で開示するつもりはあるか。既に開示しているのであれば現状報告もお願いしたい。

二 この不適切な行為は専門家が関与した虚偽の評価に基づく過剰融資であると考えるが、専門家が関与した虚偽の評価に基づく過剰融資は犯罪が成立するための構成要件に該当するか。政府の見解を伺いたい。

三 最低でも二百五十八件の不適切な行為に不動産鑑定士や建築士といった専門家が関与していると考えられる。不動産鑑定士が関与した場合、不動産鑑定評価に関する法律及び不動産鑑定評価基準に違反する行為となる可能性がある。この点に関して、違反の有無の調査をすべきではないかという旨の提言を国土交通省や金融庁へした方からの私への報告によると、国土交通省や金融庁からは調査をする気が見受けられないとのことである。そこで改めて質問するが、政府として、西武信用金庫の不正融資に関わった不動産鑑定士や建築士などの専門家による不正を調査するつもりはあるか、見解を伺いたい。
 なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法七十五条二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。また、答弁書の文字がいわゆる青枠の五ミリ以内に収まっていなくてもかまわない。

  右質問する。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/201/syuh/s201150.htm


対して政府答弁は以下の通り。


第201回国会(常会)

答弁書

内閣参質二〇一第一五〇号
  令和二年六月二十六日
内閣総理大臣 安倍 晋三


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員浜田聡君提出国がお墨付きを与えた西武信用金庫による不正融資に対する政府の調査姿勢に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員浜田聡君提出国がお墨付きを与えた西武信用金庫による不正融資に対する政府の調査姿勢に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「証拠の残っていた二百五十八物件の詳細状況」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般に、金融機関の個別の融資事案の詳細については、当該融資先の正当な利益を害するおそれがあること等から開示を行うことは困難である。
 なお、金融庁においては、行政処分の内容及び理由について、他の金融機関等における予測可能性を高め、同様の事案の発生を抑制する観点から、公表を行っており、御指摘の関東財務局による西武信用金庫に対する行政処分についても、同様の趣旨により公表を行ったものである。

二について

 お尋ねについては、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断されるべき事柄であり、お答えすることは差し控えたい。

三について

 本件に関与した不動産鑑定士等の調査については、個別の事案に関することであり、また、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/201/touh/t201150.htm


ゼロ回答と同じですね。それでもこの質問主意書をきっかけとして以降も浜田聡事務所には何度もサポートしていただけることになり、やってよかったと思っています。


そしてもうお一方は立憲民主党の末松義規衆議院議員。末松議員には議員事務所に招かれました。そこで色々相談、打ち合わせをするのかと思いきや、なんとその場には金融庁と国交省の役人が同席!


<金融庁>
監督局 金融第二課 共同組織金融室 室長
監督局 金融第二課 共同組織金融室 課長補佐
総合政策局 リスク分析総括課 課長補佐

<国交省>
土地建設産業局 地価調査課 鑑定評価指導室 室長
土地建設産業局 地価調査課 鑑定評価指導室 鑑定評価監督係長


この打ち合わせを行った時点では既に上記の質問主意書は提出済み、でもまだ未回答というタイミングであったため、この質問主意書提出の意図や私が保有している不動産鑑定書の記載内容は明らかにおかしい等を説明した上で


質問主意書に対して明確な回答を求める


としました。
しかしその結果は上記のとおり、何を言っているのかわからない、実質ゼロ回答だったわけですが。



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