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ヒノトリ旅日記2 〜ゴール目前で大事件勃発〜

エミレーツ航空はやはり食事が充実している。
ドバイからイスタンブールまでは約4時間ほどのフライトだというのに、乗ってから小一時間後、機内食の時間が来た。
出発してから日付的には変わっていないのに、飛行機の中で3食目をいただくことに。それでなくとも出発前の成田で寿司とピザを食べ、さらにトランジットのドバイでハンバーガーを食べている。暴飲暴食が過ぎる。

今回やっと念願の(?)「ビーフorチキン?」を聞くことができ、2人ともチキンをチョイス。「どっちも食べてみたいね〜」なんて最初はノリノリだったものの、ドバイ空港でもバーガーを食べた我々にビーフをチョイスする余力はなかった。
メニューはチキンのトマトソースがけっぽいものと、お米サイズのマカロニグラタンっぽい何か。副菜は2色のフムス、デザートはカフェオレ味の沼に落ちた生クリームのプチシュー。そして、パンとピタパン。

やっと明るい機内食写真が撮れた


パン好きのトリちゃんは「これに挟んで食べるとおいしいよ〜」なんてご機嫌で食べていたが、私はメインのお皿をさばくだけで精一杯。なんとなく勿体無い精神でこれまで出てきたパンをお持ち帰りしてきたが、果たしてこれを食べる日は来るのだろうか。

食事を終え、トリちゃんは座席についている画面でゲームを始めた。いわゆる脳死ゲームである。

↑あ、そういえばワインも飲みました


ひたすらにパズルを組んでいったり、同じ色のものを消していったり、特に考えずとも手を動かして楽しめるようなゲーム。
私は再び宅建の動画を見るはずだったのだが、ちょっと頭が疲れたので映画を見ることに。漫画を読んで気になっていた「ミステリと言う勿れ」があったのでそれを見る。ここから始まると、映画だけ見た人はなんのこっちゃとならないのだろうか...と思いながらもなんだかんだで楽しめた。

ついにトルコ入り!

イスタンブールに到着。
やっとトルコに着いたぜと歓喜。しかし、今日はまだもう一回飛行機に乗らなければならない。私たちのツアーは初日がカッパドキアだったため、これからさらに国内線を乗り継いでカッパドキアに向かうのだ。
トランジットは約3時間。でももうここまできたら余裕だねと、エミレーツ航空から引き取った受託手荷物をスムーズにターキッシュエアラインに預け直し、国内線の出発ロビーへ。

本当の到着まではあと一歩なのだが、この開放感というか達成感はなんだろう。トルコの地に足をつけたという喜びか、それとも長距離移動の疲れか、ゴールがいよいよ目前に近づいてきた興奮か。
飛行機にも慣れ、気持ち的に余裕が出てきた私たちはフードコートに行って瓶ビールで乾杯。トルコのビールEFESを買う。ちなみにお値段は275リラで約1,300円ほど。まぁまぁまぁ。よしとしましょう。これは出発から未だ空港しか目にしていない私たちの唯一の楽しみなのだ。

乾杯6

「長かったねぇ」
「やっとイスタンブールだよ」
「飲み終わったらトイレ行って、あっ歯磨きしたい!」
「そうださっきスーツケースから出したもんね。そうしよう」
「いや〜歯ブラシは機内持ち込み手荷物に入れとくべきだったわぁ」

そんな会話をしながらルンルンとビールを飲み終え、トイレに寄って搭乗口のゲートに行く。

ん...?おや、おかしいぞ。ゲートの周りには人がいない。乗客と思われる人もいなければスタッフも見当たらない。
ここで...あってるよね?ゲートが変わったなんてこと...ないよね?

私たちは少し焦って近くまで駆け寄った。するとちょうど奥からスタッフと思われる人が出てきたのでフライトチケットを見せカタコトの英語で聞く。

「あの、これ、ここであってますよね?」

「いや...もうとっくにクローズしてるけど」

!?


どぇぇぇぇぇぇ!!!
よくよく見ると私たちがゲートに着いたのは出発時刻ぴったり。ボーディングタイムはとっくに終わっていたのだ。
何を勘違いしていたのか、何が起こったのかわからず呆然としながらもなんとかならないかと必死で聞く。しかし当然ながらどうにもならない。もうこの飛行機には乗れないと言う。

「私たちはどうしたらいいですか...?」

「ゲート4の向かいにカスタマーカウンターがあるからそこで相談して」


正直「ゲート4」くらいしか聞き取れなかったので、わんちゃんゲート4に行けば乗せてくれるのか、それとも違う便でカッパドキア行きがあるのか(そんな都合のいいことあるわけない)なんて思いながらゲート4に走る。
もちろんゲート4も閉まっていて、通路の反対側にカウンターを見つけ、あぁあそこで問い合わせろということねとやっと理解。

カタコト英語、翻訳テキスト、音声翻訳などいろいろなものを駆使して今の状況を伝えたところ、ターキッシュエアラインの人から伝えられたのは以下。
・ネブシェヒル行きはさっきのが最終。今日はもうない
・カッパドキアに行きたいならカイセルという空港もあるがこちらも同じく今日これから取れるチケットはない
・チケットを買い直したいということであれば、明日の朝6時に出るネブシェヒル行きの飛行機が取れる。費用は1,5000円ほど


とりあえず、空路での今日中の移動はできないことが確定。ちなみにイスタンブールからネブシェヒルまでの移動はバスでもできる。確か12〜14時間ほど、深夜バスもあって値段は1万円以下だったと思う。
だがしかし。である。
そもそもバスは安全なのか、自分たちでちゃんとバス停まで行ってチケットを買いホテルまで向かえるのかということを懸念して、トルコビギナーの私たちはこのツアーを選び飛行機での移動を考えていた。

「一応聞くけど...どうする?深夜バス...乗る?」

「いや、無理じゃない...?確かにここにきて飛行機チケット買い直しは痛いけど、バスだってそこまで格安なわけじゃないし、十何時間もかかるなら結局夜に出ても着く時間は一緒くらいだと思う。体力と安全を考えたらこれは飛行機しかないでしょ〜」

基本的にぱやぱやしているトリちゃんだが、こういう時はきちんと状況を鑑み、すぱっと決断できる人だ。
やっぱりそうなりますよね。取り急ぎ、明日の朝の便のチケットを取ってもらうことに。

「じゃああたしとりまネブシェヒルの空港に迎えにきちゃう送迎バスの人に乗れなかった〜って電話してみるね〜。日本語OKって書いてあるし」

えー!電話かけるの?大丈夫?焦る私をよそに素早く動き出すトリちゃん。そうと決まればやらなければいけないことはたくさんある。

次の日の朝予約していた現地ツアーの会社に連絡をしなければいけないし、そういえば受託手荷物はどうなっちゃうの?とか色々確かめなきゃいけないこともある。1ミリもぼーっとしている暇などないのだが、私は一瞬フリーズしてしまった。
どうしようどうしよう。
ヘラヘラと歩いていて、異国の地で飛行機を乗り遅れるという大失態をしでかしたこと、節約節約とか言いながら自分たちのミスによって無駄な散財をする羽目になったこと、旅程に沿って大人しく動いていれば辿り着けるはずだったのに頭を動かしたり慣れない英語でコミュニケーションを取らなければいけなくなってしまったこと。
すべてのことにショックと動揺を隠せず、おろおろしてしまった。

なんとか諸々を確認し、荷物はまだこの空港にありピックアップはできないが、私たちが明日乗る便に合わせてもらえることがわかって、ほっと一安心。
トリちゃんが電話をしてくれた送迎バスの方も「気にしなくていいよ」と明日の朝着に併せて迎えに来てくれることになった。
そして明日の朝予定していたカッパドキアのツアーも、奇跡的に朝便でネブシェヒルに行って、空港からギョレメのホテルに着いてからでもピックアップ時間は間に合うとのこと。

結果として、大きな予定変更をすることなく諸々のセッティングができることになった。いや、飛行機取り直してるし、カッパドキアでの一泊分泊まれてないし大きな変更ありまくりなんだけど...


そして問題はここからである。
諸々の調整を行なって、時刻は20時過ぎ。取り直した朝便のボーティングタイム(今度こそボーティングタイム!!)は5時半前。
受託手荷物はなく、私たちは歯ブラシくらいしか武器のない軽装で明日の朝まで過ごさなければならない。

一度街に出て宿を探す?とも考えたが結局空港で朝まで過ごすことに。時間的にも安全的にも金銭的にも、そして何より体力的に、これからリサーチをして移動するよりここで大人しくしていようとなった。

飲むか食うか椅子に座って移動しかしていないが、体は結構疲れている。とりあえず軌道修正の策は施したものの、あぁやっちまったなと改めて凹み直す私たち。

「よし、もうじゃあこうなっちゃったんだからしょうがない。さっきのフードコートでもう一杯だけヤケビールして、ちょっとなんかお腹に入れて、朝まで横になれそうなところ、探そう!」

トリちゃんが気合いを入れ直したように言う。

「...そうだね。切り替えていこう!」

切り替えるためにもう一回フードコートに行ってEFESを買って乾杯。(バカ?)

乾杯7

ショックを引きずって乾杯写真を撮り忘れたので空港にあった謎の特大オブジェを貼っておく。トリちゃんに同じポーズさせてさっきここで写真撮ったりしてたなぁ。そういうことやってるから乗り遅れるんだよ...。アホすぎる。

でももう仕方ない。
私はペンネを、トリちゃんがバーガーキングでチキンの4ピースを買ってシェア。本当に飲むか食うかしかしてないな...。


もう一回歯磨きをして(取り出しといてほんとよかった)本日の寝床探し。
正直ヤケビールを飲んでいるくらいまではまだまだ私はしっかり落ち込んでいたのが、このあたりでやっと気持ちが持ち直してきた。
旅にトラブルはつきものだし、この状況を楽しもうと思えるように。

フードコードの脇を入ったちょっと人通りがないところにいい感じに横たわれる長いチェアがあった。しかしごはんを食べるエリアが近いせいかそこまで綺麗じゃない。「もうちょっと静かなところがいいねぇ」なんて言って、ふらふらと歩き出す私たち。

私たちの他にもトランジットなのか、ここに朝までいるのだろうという人もちらほら見え、バッグと身一つで眠れるかしらなんて思っていたけど、割とそれっぽい人も多い。
丸い腰掛け、リクライニングの椅子、1シーターソファ、3連のベンチ、よくわからない平たい場所。

腰掛けるところは色々あるが、どれもゆっくり寝るにはいまいち。そりゃそうだ。寝る場所じゃないからな...。
一番柔らかそうだったのはキッズスペースの遊ぶところにあった布製のベンチだったが、さすがにそこで寝るのは憚られる。

「もうあたし、ここで全然いけるよ〜!」

しばらく探した後、トリちゃんがそう言って指差したものを見て、私はびっくり。これである。

「え。ここ?あっちのチェアのがよくない?」

「あれさぁさっき座ってみたけどちょっと首のあたりが居心地悪くて、だったらこっちの方が横になれるしいいかなぁーって」

うーん、首の話はわからんでもない。私も確かにそう思った。でもこれ?ベンチ、椅子...っていうかもう、骨じゃん。これはさすがにクッション性なさすぎません?
そうは思いながらも、ふらふらとそこに沈みにいくトリちゃんを見て焦る。やばい、もうトリちゃんが寝そう。
トリちゃんは一度充電が切れるともうダメなのだ。遊び疲れて突然床に突っ伏す幼児のように急に起動しなくなる。

仕方がないと隣に一緒になって寝転んでみるも、やっぱりさっきの椅子よりも硬くて痛い。そして明かりが煌々とついていて、寝づらい...。
人目がある気がしてそれも気になるし。いや、こういう場合は人目につくところの方が安全なのだろうか。


悶々と考えながらも、少しは寝とかないとなぁと横になってみる。小一時間くらいはそこでそうしていただろうか。

うん、やっぱダメだ...体が痛い。
のそりと起き上がると珍しくトリちゃんがそれに気づいて起きた。

「いいよ〜あたしはここで寝てるからヒノちゃん好きなとこ行きなよぉ」

いやいやいや...そういうわけにもいかんでしょう。
いや、2人まとまってたって何かあったらもはやな気もするけど、異国の地の知らんところで寝るのに、お互いが目に入らないところにいるのはさすがに怖すぎません?でも私、この骨ではやっぱり寝れない...

そう思っていると、目の前にあったリクライニングの席が空いた。今だとばかりに移動するとトリちゃんもこちらの席にやってくる。

「あっちじゃなくてよかったの?」

「うーん、私は横になる方がよかったけど、でもここでも寝れるからいいよー寝よ寝よ〜」

そう言って椅子にころんと横たわるトリちゃん、秒で寝る。

さっきまで「骨ベンチはありえない、トリちゃん信じられん」なんて思っていたくせに、私を気遣ってあんまりお気に召していない椅子に隣で寝てくれるトリちゃんを見て、自分のわがままさに後悔が押し寄せる。
あぁ、私って結局末っ子というか譲れないというか、ほんとこういうとこがダメだよなぁ...。

そんな気持ちを抱きつつこわいなぁ大丈夫かなぁと心配しながらうとうとと眠りについた。


起きたのはボーディングタイムの2時間ほど前。隣を見るとトリちゃんはすよすよと眠っている。
夜が明けた...!なんとか空港で一夜を明かしたぞ。
本当なら今頃カッパドキアの洞窟ホテルで起きているはずだった、トルコ2日目の朝。今度こそカッパドキアへ!


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日野笙 / Sou Hino
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