ときめきビザ　#毎週ショートショートnote

「次の休みは何する？」

「うーん...」

「国内旅行は飽きた？」

「飽きた...のかも」

「じゃあ思い切って海外？」

「ビザが...」

「大丈夫、大体パスポートで行けるよ」

「違うの。ビザが切れちゃったのかも」

「...何のビザ？」

「ときめきビザ。最近あなたといても、ときめかないの」

「なるほど...それは困ったなぁ」

「ほらそういうとこ。全然焦ったりしないんだもん。私のことどうでもいいのかなって、気持ちがしぼんでくの」

「もう僕のこと、好きじゃない？」

「わかんない...」

「...よし。じゃあ次の休みは僕の実家に行こう」

「え？」

「両親を紹介するよ。僕の育った町も過ごした家も、全部見せるよ」

「なんで？」

「僕はずっと君といたい。ときめきがなくなっても、空気と同じくらい自然に。君が安心できる場所になりたい」

「それって...」

「ときめきビザが切れたなら違うビザはどう？家族が増えて賑やかになるわいわいビザ、2人で曲がった腰で歩くよぼよぼビザ」

「ふっなにそれ」

「だからずっと一緒にいてくれないかなぁ」

「もうそれ、永住権じゃん」

「そうとも言う。あんまり伝わってないかもしれないけど、僕のビザはまだ切れてないよ。ずっと君にときめいてる。今度から言葉にして伝えるよ」

「ほらそういうとこ！さらっと言うから本音かわかんない！」

「照れてる、可愛いね」

「いい！もうわかったから！」

(571字)