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ギルティ外伝 :あそこは地獄だったのか、それとも

先日仕事の帰り道で、東西線に乗っていた時のこと。ふと顔を上げ正面に座っていた男性を見る。

ん...?
いや、気のせいか。

いやでも...
あまりジロジロ見るのもな...と思いながらも、どうしても気になって2〜3度顔を上げ二度見三度見を繰り返す。すると、向かいに座っていた男性も驚いたような表情で私と全く同じ動きをしている。

「あ、やっぱり...」

「ですよね...!」

そこに座っていたのは、あのギルティ女史が君臨するオフィスでかつて一緒に働いていたデザイナーさんだった。
東西線のちょうど木場あたりで遭遇したので、名前は木場さん。

電車内で2人して「この距離で話すのも...どうしよう...」と絶妙な動きをする。次の駅に止まり、木場さんの隣の席が空いたので私はさっとそこに移動した。

「お久しぶりです!」

「やっぱり日野さんですよね。びっくりしました」

「私もあれ?木場さん?と思って何回も見ちゃいました(笑)。お元気でしたか?」

「はい、日野さんも元気そうですね。っていうか全然変わらないな」

「木場さんも全然変わってなかったのですぐわかりましたよ」

木場さんに言った通り、すぐに顔はわかった。
しかし、偶然久しぶりの知り合いと会うと、一瞬「あれ、この人知ってる...!でも、えーと誰だっけ、どの時代に会った何の人だっけ...」みたいになって、自分の人生アルバムを頭の中で高速でめくりながら検索をかけることってないだろうか。その時の私はまさにそんなような感じだった。


かつてのオフィスの沿線でもなければ、お互い家の付近でもない。
たまたま予定があって乗り合わせた電車でこんなことが起こるとはと、偶然の再会にちょっと興奮混じりで話す私たち。

「いやぁこんなことってあるんですね」

「ですね〜。木場さんは今もお仕事変わらずですか?」

「ええ、僕は相変わらずフリーでやってるんですけど、これから子ども向けのデザインの教室を始めようとしてまして。今それを立ち上げる準備なんかをやってますね」

「え〜いいですね!あ、そういえばお子さんもお元気ですか?確か〇〇ちゃんでしたよね」

「すごい!覚えてるんですか!?なんか嬉しいなぁ」

木場さんは偶然の遭遇よりもさらに驚いた顔で、嬉しそうに愛娘の話をしてくれた。当時、生まれて間もない娘がいますという感じの自己紹介をしながらあのオフィスにやってきた木場さん。
その娘さんの名前がちょっと変わっていて、日本らしい単語なんだけど名前として使われるのはなかなか珍しかったので、私はなんとなくその名前を覚えていたのだ。


あの当時も生まれたての娘のことをにっこりと笑って話していたが、どうやら私が名前を覚えていたことがとても嬉しかったようで、繰り返し「何年も前の話なのに嬉しいなぁ」なんてにこにこしながら言う木場さん。

自分の子どものことを覚えててくれるのって、親にとってはすごく嬉しいことなんだなぁ。私は彼の反応を見てそんな風に感じながらも、言ってみてよかった(そして間違ってなくてよかった...)なんて思う。

「日野さんは今も、他のみなさんと連絡取ったりしてます?」

木場さんに聞かれ、私はなぜかちょっとドキッとしながら答えた。

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