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まだまだ冬も手前だっていうのにあの祭りの気配がするんだぜ

パンデミックが起こっている。うちのオフィスで。

始まりは山下さんの不調だった。
声がガラガラで明らかにいつもとは違う様子の中「いや、熱はないから多分風邪じゃない。大丈夫」なんて言って1日仕事をしていた山下さん。

案の定というか当然の如くそれは次の日「風邪」に昇格し、山下さんは翌日から欠勤。その置き土産を食らった他のスタッフも日を追うごとにばたばたと倒れ始めた。
まさに山下パンデミック、ヤマパンである。
そんな風に略すと素敵なお皿がもらえる某春の祭典と松たか子の顔がチラついてくるが、このヤマパンはそんな楽しいキャンペーンではない。


社内SNSで1人、また1人と体調不良を訴えるメッセージが増える度、責任を感じてか山下さんは涙マークのスタンプを押す。
泣いたとてもう遅い、菌はばら撒かれてしまったのだ。

かくいう私も安心してはいられない。山下さんとはまぁまぁ近い席だし、ガラガラ声の状態だった日に至近距離で会話もしている。
こういう時はあれの出番である。


3年前に書いた「風邪かもしれないやつ」を「風邪」にしないための必勝法。山下さんにも教えたはずなんだけどなぁ。
きっとあの口ぶりから想像するに発熱がないのをいいことにぬかったんだと思われる。

何事も事前準備が大切なのだ。寒さ対策もそうだと思う。
寒いなぁと思ってからいくら着込んでもなかなか温まらない。なぜならもう体の芯が冷えてしまっているからだ。
お風呂に入ってポカポカなうちにきちんと体温が守られるような服に身を包めば、そこまでアホみたいに厚着しなくたってその暖かさを保っていられたりする。
やっぱり何事も巻き起こってから太刀打ちするよりも、そもそも巻き起こらないように粛々と守りを固めていく方が大事なのだ。


なぜそんな小言のようなことをぶつぶつ書いているかというと、山下さんのことを「やれやれ全く」なんて思っていたくせに私もまんまとパン祭り、じゃなかったパンデミックに参戦してしまったからだ。
言うのは簡単だが、自覚症状がないうちから「ちゃんとしとく」ってやっぱりすごい難しい。自戒。

気配を感じていればこちらも先手を打ったのだが、今回のは初速が速かった。私が「これはもしかして...」と感じるよりも先に「残像だ」と言わんばかりにウイルスは私の体内に侵入したようである。


もはやうちの社内SNSでは「風邪」という言葉ではなく「ヤマパン」が流行っている。そしてその度に涙(スタンプ)を見せる山下さん。
最初は笑い話のようにみんなで使っていたが、誰かが風邪を引くたびに「すみません」とコメントする山下さんを気遣ってか「いや、もともと俺もその前から風邪っぽかったし」とか「うちの子の保育園でも流行ってるし、私が持ってきちゃったのかも」なんて話になっていった。

その度に社内SNSではじゃあオリジナルはここか!と面白がってコジパンやらマスパンやら色々なパンが誕生する。
しまいにはよくお調子者でちょっとサボり癖のあるいじられキャラの子が「僕もちょっと今日体調悪くて〜マスパンかなぁ」なんて使った時には「いやお前は嘘パン」「絶対ガセパン」「けびょパン(おそらく仮病の意)」なんて叩かれる始末。けびょパンはなんかちょっと可愛い...。

もうパンデミックの語源は消え失せ、あだ名と化してしまった。
こうなってくると、これはある種のパン祭りと言っても過言ではないかもしれない。


みなさんの周りではパン祭り、開催されていませんか?
一層寒くなる季節の変わり目、お体に気をつけてください。

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日野笙 / Sou Hino
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