うっせぇわとトトロの「これの頭はどこやねん問題」
スーパーで買い物中。
カートを押すお母さんの横で小さな女の子が二人はしゃいでいる。
姉妹だろうか。お母さんは買い物をしながらも「走らないの!」と子どもたちにも目を光らせる。
妹と思わしき女の子の方が、別にその母の言葉へのアンサーソングということでもないと思うのだが手拍子を叩きながらいきなり歌い出した。
「はぁ〜、うっせぇ、うっせぇ、うっせぇわ〜!」
お、これは最近よく聞くあの曲だ。
確かに流行っているとはいえ、タイミングによってはお母さんからしたら若干イラッとするかもしれない。
一生懸命お世話をしながら本日のおかずを選んでいるというのに、うっせぇと言われてしまっては母も大変である。
女の子はしばらく「うっせぇわ〜」のところまでを何度か繰り返し歌っていた。どうやら彼女はそこまでしか歌を覚えていないらしい。
するともう1人のお姉ちゃんの方が一緒に手拍子をして、その続きを歌う。
そこで、私は「ん?」となった。
「あなたがおもうより、けんこうですっ!」
実は私は、この曲を巷の噂で知ってはいたものの、オリジナルをきちんと聞いたことがなかった。
「いっさいがっさいぼんよーなー あなたじゃわからないっかもねーー!」
そして二人の歌はまたサビに戻る。
「いっさいがっさい〜」のくだりを聞いて、私はより一層「あなたがおもうよりけんこうです」の部分にだけ、なんだかなんとも言えない違和感を覚えた。
結構上手に、リズミカルに歌っていたのだが、なんだかそこだけリズムがよくわからないのだ。
なんともあふれているというか、はまっていないというか。
そこで気になってしまった私は家に帰ってオリジナル曲を聞いた。
そして、すぐにあぁ、なるほどと思った。
(サビは0:50くらいから)
私は原曲を知らなかったため、少女たちの手拍子の通りに素直に歌を聞いていたところ「あなたがおもうより〜」の「あ」が小節の頭だと認識していたのだ。
文章で上手く伝わるだろうか。
つまり、正しくは「あ」の部分は前の小節にかかっていて、この曲は
1小節目「うっせぇうっせぇ」
2小節目「うっせぇわ〜 あ」
3小節目「なたがおもうより」
4小節目「けんこうです」
という譜割りだったということだ。
それを知らなかった私は、彼女たちの自由な手拍子に翻弄され「ん?なんか字余り感あるな」と思ったのだ。
そしてそこで思い出した。
私は幼い頃も、この「頭がわからない問題」でかなり苦労したことがある。
それは小学生の頃の器楽演奏でとなりのトトロの挿入歌「風のとおり道」を演奏した時のことだった。
私は木琴担当で、木琴はあの一番最初に聞こえてくる印象的なメロディラインを演奏する重要なパートだったのだが、私はあのメロディの「頭」がどうしてもわからず、他の木琴の子とうまく合わせられなくてかなり苦労した。
今はなんとなくわかるようになったが、あの頃は小節の頭に16分休符が入るというのがどうしても感覚として理解できなかったのだ。
文字ではたして伝わるだろうか。
拍の裏と表など、一度逆に聞こえてしまうとなかなか正しく聞くことができなくなってしまう現象を味わったことがある人はわかるかもしれない。
これが本物。
ピアノソロから入るよりもこれの方がわかりやすいかもしれない。
これは惑わされそうになるが、後から他の音が入ってきて「あぁそっちが頭ね」とわかりやすくなる。
そして、以下のアレンジが私が当時こういう譜割りだと勘違いしていたものに近い。休符なしで頭からメロディが始まるパターンだ。
どうしてもこの「テレレテッテレ」の違いを伝えたくてYoutubeで色々な風のとおり道を聴き漁ったが、はたして文章でうまく伝わっただろうか...。
うっせぇわはそもそも小節が違うので、音楽に詳しい人からすると全く違う話だと言われてしまいそうだが、私はスーパーの女の子の「うっせぇわ」によって、昔がんばって聞いたのにどうしてもうまく体の中に染み込まなかった風のとおり道の「これの頭はどこやねん問題」を思い出しだのだ。
私は昔からそういう頭とか区切りに対して、なんともアホみたいな間違え方をよくする。
言葉になるとそれがもっと顕著だ。
ドコサヘキサエン酸もずっとワンワードだと思っていたし(なんならドコサヘキサエンサだと思っていた)、キリマンジャロの区切るところもキリ/マンジャロだと思っていた。
クアラルンプールもクアラルン/プールだと思っていたし、ニュージーランドもワンワードかもしくはニュージー/ランドだと思っていた。
宇多田ヒカルのAutomaticの歌詞「唇から自然とこぼれ落ちるメロディー」も小節の区切りのせいで「唇カラシ、ってなんだろう。痛そう」なんて思って歌詞を見て、そうだよね、辛子なわけないよね、と笑った記憶がある。
一番ひどいものだと新渡戸稲造のことを幼い頃、漢字も知らないまま耳で音だけを覚えていて、なぜかずっと「にと」が名字で「べいなぞう」が名前だと思っていた。
べいなぞうって...今思うとすごい名前である。
そんな間違え方ある...?一体何人なんだベイナゾー。
言葉の正しい区切りを知ると、新しい言葉を知ったような気持ちになって面白い。そして音楽も、区切りや間があるからこそ活きる味わいもあったりして、また面白い。
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