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アメリカ人が感動した日本の「ほんもののたべもの」

最近新しく外国人の知り合いができた。彼の名はテオ。Fromアメリカ。
私のよく行くバーに数ヶ月前から顔を出すようになった人で、明るく誰にでも話しかけるキャラクターだったこともありあっという間に常連のみんなと仲良くなった。

バツ3(2だったかな...)で元奥さんが日本人だったというテオ。仕事の都合で数年前から日本に住んでいるそうなのだが、どうやらかなり大きな企業にお勤めらしく出てくる話がとても華やかなのだ。

伊豆にある友達の別荘でシャンパンパーティをしたとか、世界的に有名な某ファッションブランドの社長と一緒に食事をしたとか「先週何してた?」みたいな何気ないやりとりから飛び出すエピソードがどれも一般人とはちょっとかけ離れていて、みんな「ナチュラルにセレブじゃん」とか「なんだそれすげぇぇぇ」と驚くばかり。
でも店に来る時は基本短パンにタンクトップというとってもカジュアル(?)な格好をしているため、セレブ感はあまりない。


ここに来る人たちはこういう時に嫌味に捉えたり「けっ自慢しやがって...」みたいな空気にならずにフラットに受け止める人が多い。その分もてはやしもしないのだが。「まぁみんなそれぞれ色んな人生だけど、ここで乾杯したら何才だろうと誰だろうと友達だよね」という感じ。

テオも最初の頃こそちょっと「ふふん」と得意げな調子だったが、みんなの反応がそんな感じなのでいつしかそういう雰囲気もなくなった。
実際どう思っているかはわからないが、ちょくちょく通っているということはきっと彼もお店の雰囲気や常連さんたちが気に入っているのだと思う。


そんな彼と「最近食べた美味しかった日本食は?」という話になった時のこと。
私たちは今までのエピソードの数々からなんとなくすごく高級なものが出てくるのかなぁと思っていたのだが、返ってきたのは意外に身近な料理だった。

「オコノミヤキ!of ヒロシマ!It was soooo amazing!」

その時の味を思い出しているのか、両手をほっぺたにあてて「ぽわわわ〜ん」みたいな表情をするテオ。

「あー広島風お好み焼きね!美味しいよね〜」

「普通のお好み焼きは食べたことある?」

「もんじゃは?」

「アーどちらもある。でもそれらは、美味しくないじゃないけど、まぁまぁ、普通」

そう言いながら手のひらを下に向けてゆらゆらさせる。そしてその直後、テオはカッと目を見開いた。

「でも、ヒロシマは違う!とてもベストだった!」

「俺も麺入ってる方が好きー」

「YES!ヒロシマじゃないのオコノミヤキは、なんていう、Pancakes?Snacks?アナタは誰ですか?ワカラナーイみたい。それとモンジャーはちょと like a ウェーみたい」

戦隊系ヒーローみたいになってしまったモンジャーの「like a ウェー」については明言しないでおこう。
金曜の夜の駅のホームとかでたまに見るアレだ。リリースする時のジェスチャーをするテオ。

「あーなるほどね(笑)やっぱりもんじゃは受け入れられない人多いよね」

「でも!ヒロシマは、すごくいい!ほんもののたべものと思った!」

「本物の食べ物...?」

我々が少々困惑していると、テオが指を折って広島風お好み焼きに入っている具材を挙げながら力説する。

「キャベッジある〜 エッグもある〜ヌードルある〜ポークある〜。これでほんものになったと思う!」

なるほど、そういうことか。テオの言う本物とは多分完璧のことだ。
「ほんもののたべもの」というのは、それ一品のみで食事となるような食べ応えのあるもの、一番「ごはん」っぽいものという意味のようだった。本物の食べ物=完全食みたいな感じだろうか。

関西の人はお好み焼きをおかずに白米を食べるというし、そう考えるとテオのように関西のお好み焼きに対して「これは…主食?おかず?どのポジションの食べ物...?」という気持ちになるのもわかる気がする。
その頭でいくとモンジャーに関してはもはや液体の部類に入るのかもしれない。焼きスムージーみたいな。

広島風お好み焼きは関西風と違って具材を混ぜて焼くのではなく、重ねて焼くスタイルだ。その作り方やビジュアルも、もしかすると外国人にとっては親しみやすいというか食べやすいのかもしれない。

それにしても「ほんもののたべもの」って表現、面白いなぁ。
日本語として聞くとなんだか哲学的に感じたり「広島風以外はニセモノだ!」というお好み焼き戦争が起こってしまいそうな過激発言にも聞こえるが、意味がわかるとなるほど確かにあれは主食、主菜、副菜が見やすい形で盛り込まれた満腹感のある一品だなと思う。

「じゃあ今度みんなで家でお好み焼きパーティしよう!広島風ね」

「うちたこ焼き機あるからタコパも同時開催できるよ」

そんなことを言って盛り上がる私たち。
別荘でシャンパンパーティも楽しそうだけど、せっかくなので庶民のパーティであるタコパもおこパ(おこパって言う?)も日本にいるうちにぜひ楽しんで欲しい。
なおその際はシャンパンを持参してくれると私たちもシャンパンパーティが体験できるので嬉しい限りである。

ちなみに私は粉物系でいうとモンジャーが好きです。
あれはウェーじゃなくてちまちま食べれるつまみ枠なのよ。

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日野笙 / Sou Hino
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