月夜の寝ぐせ　#毎週ショートショートnote

「いや！おんなじ！」

我が家の次女はイヤイヤ期真っ盛り。
今朝は姉と何でも一緒じゃないと気が済まない「ねぇねと一緒」のダブルパンチだ。

「ほら、ねぇねも同じご飯だよ？」

「ちあう！こえ！」

次女が泣き叫びながら指差したのは長女の寝ぐせ。
跳ね上がった髪が可愛らしくて「お耳みたいだね」と撫でていたのをしっかり見ていたのだ。
これは後で直すからなんて言っても当然聞くわけがない。
なんとかなだめて保育園に送り出す。

夜だろうとイヤイヤは止まらない。
今宵のご要望は「カーテンを閉めるな」。優しく諭すのにも疲れ果て、それで寝るのならともう言うがままに。

薄暗い部屋に月明かりがぼんやりと差し込む。
次女がやっと寝静まった頃、隣にいた長女がむくりと起きた。

「ごめんね、眩しかった？」

長女は首を横に振ると声をひそめて言った。

「ママ、これで同じとこぴょんってして」

長女の手にはヘアゴムが2つ。
月夜のもと、私は暴君な姫と心優しい姫にお揃いの寝ぐせを結った。

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