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ジンジャークッキーイブ #毎週ショートショートnote

クッキー屋のジンジャーマンは悩んでいた。
もうすぐクリスマス。ひと昔前は大忙しだったのに、苺のケーキやブッシュドノエルなどの人気に押され、近頃はあまり売れなくなってしまった。

そこでジンジャーマンは郊外に売り込みに行くことにした。
街のはずれにはエルフやドワーフなど様々な種族が住んでいる。彼らは滅多に街に来ないので、配達すれば売れるのではと考えたのだ。
予想は的中し、何件か注文が入った。

「ではイブの日にお届けします!」

「楽しみだわ、遠くまでありがとう」

「いえ、これから向こうの村にも行く予定でしたから」

「それは危険よ。あそこは巨人族の村なの」

「そうですか...」

ジンジャーマンは考えた。
でも巨人族なら大きなクッキーが売れるかもしれない。せっかくここまで来たし、行ってみよう。


そしてイブの日。
エルフの家のチャイムが鳴った。

「クッキーを届けに来たよ」

玄関に出たエルフは驚きながら答えた。

「まぁ巨人族の...どうしてあなたが?」

「注文したクッキーを街に取りに行ったから、ついでに持ってきたんだ」

「そうだったの。じゃああなたも今年のクリスマスはジンジャークッキーを食べるのね」

「それが...あまりに美味しそうで、待ちきれなくて...」


(511字)


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日野笙 / Sou Hino
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