電車で聞いた、上司と飲んだあとの部下の「あぁーーー」

「俺、あっちだから。じゃ！」

「おつかれさまでしたー！」

「あざしたー！」

山手線の新宿駅。混雑するホームで、別れの挨拶を交わす3人。
ホームにいたのはスーツ姿の50代くらいの男性だ。
そして電車に乗ってきたのは強面の30代くらいの男性と、黒いキャップに黒いTシャツ短パン、サンダル姿の男性。彼は20代中頃くらいだろうか。

彼らはドアが閉まってからもホームに残る上司と思われる男性にぺこりと頭を下げたり両手を上げて手を降ったりしている。
そして電車が動き出すと、私服っぽい方の男性が吊り革にぶら下がるような姿勢で下を向き「あぁーーー」と感嘆の声を上げた。
その姿を見て強面さんの方が「おつかれぇ」と声をかける。

もしかしてこれは、あれだろうか。
あんなにもにこやかに別れていたけれど、実はホームに残っていたおじさんとの集いがかなりしんどくて疲れたぁ的な嘆きだろうか。
黒キャップさんの声を聞いて、私はなんとなくそう思ったのだが、顔を上げた黒キャップさんからは私の想像とは真逆の答えが返ってきた。