『新生日野レッドドルフィンズ、ファンと共に好発進』
ラグビーのある風景って、いいものだ。日野レッドドルフィンズの新リーグのホーム開幕戦。寒空の下の秩父宮ラグビー場の観客席が赤色に染まり、赤いジャージのレッドドルフィンズ選手が緑色の芝生で躍動した。
新型コロナ禍の感染急拡大が続く中、試合があるというだけでホッとする。試合後の記者会見は対面がなくなり、かつてのオンライン・オンリーに変わった。日野の箕内ヘッドコーチの言葉には実感がこもる。
「コロナ禍にもかかわらず、初のホーム試合にたくさんの方に詰めかけていただき、非常にありがたいし、感謝したいなと思います」
この日の観客は2321人だった。新リーグになったことで、試合の興行権はリーグからホストチーム側に移った。つまり、この日は日野が担当した。ラグビー場周りには縁日のような出店が並び、日野関連グッズの販売ブースもあった。
そういえば、海底火山の噴火で被害を受けたトンガへのチャリティーマフラータオルも販売されていた。困っている人を助ける、これぞラグビー精神なのだ。
日野のナンバー8、堀江恭佑主将は「特別な雰囲気の中で勝てたことがすごくうれしかった」とマスク下の顔をほころばせた。
「(観客席では)日野のいろんなグッズを掲げてくれている人たちの声援を感じることができました。また試合を(ラグビー場に)見に行きたいと思ってもらえるよう、がんばりたいと思います」
新リーグだもの、勝つだけではなく、ファンを魅了するラグビーが求められることになる。そういった意味で、日野の試合はオモシロかった。多士済々。若手もベテランも。いろんな経歴の選手たちがワンチームとなり、勝利のためにからだを張った。
例えば、前半終了間際のトライを演出したSO北原璃久(りく)と、ウイングの吉川遼(りょう)。北原は國學院久我山高からオタゴ大学に進んだ後、今季、日野に入った22歳。吉川も國學院久我山高からワイカト大学に進学、2019年に大学卒業後、日野に加入した25歳。ともにニュージーランドの大学で本場のラグビーに接するなど、チャレンジングなラグビー人生を歩んできた。
そのトライは、北原のオープンへのキックパスを、ノーマークの吉川が好捕してインゴールに駆け込んだものだった。この日の「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」(優秀選手)に選ばれた吉川は「手を挙げて(キックパスを)呼んでいたんです」と笑った。
「北原選手が正確なキックを蹴ってくれました。僕はただ、そのボールをキャッチするだけでした。ただ、練習では、こういった合わせの練習をして、うまくいったことはなかったんですけど」また、目を引いたのが、日野デビューしたCTBのTJ・ファイアネ。U20NZ代表の経歴を持ち、ブルーズから今季移籍してきた。26歳。鋭いランもだが、的確な判断、パスでラインに勢いを与えた。自己評価を聞けば、ファイアネは「どうでしたか?」と質問で返してきた。
「99点」
「オ~、アリガトウ」
笑って、こう続けた。
「序盤からボールにさわって慣れることを意識していました。ゲームが進むにつれてチャンスが出きてきた。いい形で終われてよかったです」もうひとり、43歳の職人プロップ、久富雄一も途中出場した。新リーグでもすこぶる元気。大したものだ。
吉川も「久富さんがあそこまでからだを張って動いてくれているので、僕は勇気や元気をもらっています」と漏らした。最後に、今季の日野の強みを聞けば、吉川はうれしそうに言った。「いろんな年代、いろんな国籍の選手がいて、みんなでひとつのボールに向かって、一緒にラグビーをしている、それが日野の強みだと思います」開幕2連勝。ヒノ、ヒノ、ヒ~ノ♪ 新型モデルの日野レッドドルフィンズが新たな荒野を軽快に走り出す。
(TEXT BY 松瀬学)