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『完敗と言える敗戦もしっかり受け止め、未来へのレッスンと捉えて次に活かす』

 終わってみれば奪われたトライは11。得点は22対67という完敗だった。箕内ヘッドコーチ(HC)が「しっかり受け止めなくてはならない」という結果であり、堀江共同主将が「いいレッスンをさせてもらった」と言うのもある意味でうなずける。相手のハーフ団はオーストラリア代表というまさに世界のトップレベル。ほかバックス陣には13番フィフィタ、15番マシレワと現役の日本代表も擁する。

 だが、そんな相手に対しても試合の“入り”は良かった。堀江共同主将が「試合の開始10分をすごく大事にしていこうということで挑みました」と言う通り、開始6分で日野レッドドルフィンズが相手のペナルティー、ラインアウト、モール、FWの力勝負から先制トライ。その後12分に相手のBKを主にした数多いパスからトライを奪われるも、29分には相手のモールコラプシングの反則から、ラインアウト、モール、そしてFWが押し込みトライを得て再度リードとなる。

 実はこのときのPKの地点は相手ゴールの真正面の近い位置だったため、PGを狙えばまず3点確実に得られたはず。それでもあえて自分たちの強みを生かしてトライを取りに行き、結果を出したのだ。

モールを押し込むFW

 この時点で得点は10対5だが、より注目すべき数字がある。それは0対6という反則数だ。前節の三重ホンダヒート戦は、相手の8に対し日野が16という倍の反則数。2枚のイエローカードまで出された。

「やはり、前の試合ではその規律の部分でゲームを壊した部分はあったと思うので、今週はそこに対してしっかりと取り組んできました」と箕内HCが言うように、そこは評価できる点であろう。

 その後32分過ぎにこの試合初めてノットリリースザボールの反則を犯し、終了間際の39分にスクラムでの反則を取られ、いずれも相手のトライに繋がったのだが、前半の反則はわずかにこの2つだけだった(相手は6)。

 さらに注目したいのが後半早々、自陣ゴール前で相手のロングパスに手を出した日野9番SH古川浩太郎がシンビンとなった後のこと。シンビンとなったこと自体は反省すべき点ではあるが、14人で守りながら相手の得点を許さず、逆に相手の反則を誘い続けた。

 シンビンとなった後の日野陣5メートルラインアウトから攻めるライナーズFWに対して、ジャッカルを決め相手のノットリリースザボールを誘う。ジャッカラーは1番PRの山崎基生。その後、45分にも山崎は相手のアタックから自陣22メートル内でジャッカルを決めて、連続してPKを得た。

 山崎は言う。

「試合開始前から相手はBKを中心に速いテンポでくるのはわかっていたので、少しでも球出しを遅らせようと前半からもけっこう絡んでいました。前半はPKにはなりませんでしたが、やり続けたことが後半の結果につながったんだと思います」

チームのピンチを救った山崎選手

 その後も日野は14人で規律を守りながら戦い、逆に相手の反則を誘発。51分には相手にとって後半5つ目のペナルティーかラインアウトを起点に5番LOの木村勇大がタッチライン際にこの日2本目のトライを決めたのだ。

「そのときはゴール前のライン際でラックができていて、ライン側には相手9番しかいなかったのでので、川井(太貴。SHの代わりを務めていた12番)に声をかけて、(ライン側の)右に開いてボールをもらいインゴールに飛び込みました」

2本目のトライを取った木村選手

 木村はその場面を振り返るが、確かにライン際を守っていたのは相手9番SHウィル・ゲニア。たとえ元オーストラリア代表とはいえ、自信を持って飛び込んだ大柄なロックを止めることはできなかった。この時点での得点は15対24。そして反則数は4対13。

 その点は堀江共同キャプテンも「自分たちは我慢して反則をせず、逆に相手の方が反則を重ねていったので、そこは試合前に言っていたことが実行できていたとは思います」と言う。

 そして他にも注目すべき数字が後半にある。1対0。これは後半のスクラム数である。実は、後半40分の間でスクラムがあったのは相手のノックオンからのマイボールスクラム1回のみ。相手ボールスクラムは0だったのだ。前半のマイボールスクラムは5回あったが、自分たちのミスによる相手ボールスクラムは2回。スクラムを強みとしている日野としては、少し残念だった気もしないではないが、この日ジャッカル連発で活躍したPR山崎は、「その分自分たちのノックオンなどのミスがなかったということでよい結果だったと思います」とその点については前向きだ。

 またこの日、おそらくは現在世界のラグビーファンの間でもっと知られている10番SOであるクエイド・クーパーと対峙した日野のSO、22歳の北原璃久は、「自分との直接のマッチアップはなかったですが、キックの蹴りあいでは負けた部分はあったな、と。でもその分自分としても反省して学べる点も多かったと思います」と、こちらも前向き。

SOとしてゲームメイクした北原選手

 敗戦は敗戦。完敗も否定できない。が、修正すべき点を修正し、自分たちの強みを生かして挑んだ結果の敗戦は、堀江共同主将が言うように「いいレッスン」であったとも言える。もちろんそれは、日野レッドドルフィンズの未来のための貴重なレッスンである。

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