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エナジーの塊、37歳の笠原雄太の「レディー・ゴー!」
「レディー・ゴー! レディー・ゴー!」。日野レッドドルフィンズのモールから、エナジーの塊、笠原雄太の大声が聞こえてくる。37歳のベテランロック。そのひたむきさに胸が打たれるのである。
23日の日野×マツダ戦。我らの「かさケン」は今季初めて先発出場した。絶対に負けられない順位決定戦。ラインアウトではキャッチャーとして大活躍した。加えて、捕球したあと、ドライビングモールの芯となってぐいぐい押し込んでいったのである。
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試合後のオンライン会見。箕内拓郎ヘッドコーチ、堀江恭佑主将と並んだ笠原は黒マスクの下の顔をほころばせた。
「ホーム最終戦。まあ、チームとして勝つことができてよかったなと思います。ただ、まだまだ、チームとして修正する部分があるので、この2週間でしっかり練習して、釜石戦に向かっていきたい」
いつも実直、誠実。真顔で続ける。
「2年ぶり(の先発出場)だった。結構、久しぶりだったので、もっと緊張するかと思ったんですけど、意外とみんなとコミュニケーションをとれました。落ち着いてできたのかなと感じてはいます」
北海道函館市出身。ラグビーでは無名の七飯高校1年生の夏、サッカー部からラグビー部に転部した。ご縁が重なり、流通経済大学からヤマハ発動機ジュビロ(現・静岡ブルーレヴズ)に進んだ。2015年、日野に移籍してきた。だから、日野7年目。
鋭いタックルと密集でからだを張り続けてきた。いつも全力。この日の試合でも、乱れた低いパスを前のめりに倒れながら両手でキャッチした。執念だった。
素朴な疑問。なぜ、モールの芯で「レディー・ゴー!」と大声を出すのですか? と聞いた。笠原は照れた。
「ははは。(ラインアウトで)うまくキャッチできて(モールを)組めたんですけど、なかなか押せなかったので…。もっとモールで相手にプレッシャーをかけようと思って、夢中で掛け声を出していたのです」
なるほど。
「やっぱり、フォワードはスクラムとラインアウト、モール、そこでの勝負が大事だと思います。個人的にはモールを組むと一段と気合が入ります。そりゃ、声も大きくなりますよ」
直後、隣の堀江主将が「マツセさん」と声をはさんだ。
「笠原さんがリザーブの時は、いつも後半から(試合に)入ってきて、僕らにエナジーを与えてくれるんです。今日は先発だったので、笠原さんのように途中からエナジーを与えてくれる選手がいなかったのかなと…。ははは、モールの時は頼りになりました」
笠原はただ笑っているだけだった。今日の日野の先発メンバーには、プロップが神戸製鋼から移籍してきた33歳の山崎基生、フッカーは同じく神鋼からの33歳、木津武士、ロックにはNECから移籍してきた33歳の村田毅といぶし銀が並ぶ。
みんな、ラグビーが大好きなのだ。楽天家のようで、どこかストイック。自身の境遇に最善を尽くす人生にはつい拍手を送りたくなるのだった。
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TEXT BY 松瀬学