センスの正体
”センスがある”と評されるものに、どんなイメージをもつだろう。
プロデュース領域で成果がでてくると「センスのある仕事」といわれることもあれば、「感覚的な仕事」といわれることもある。
プロデュースの仕事は実際、個人のセンスとは切り離せない仕事だと思う。
センスは「言語化できない」のではなく、「容易には言語化できない」からまるめてそれをセンスとよぶのではないか、と最近思っている。
では、センスとはなんなのか。
Appleの成功要因はジョブズのセンスでした、というのはあまりにも短絡的だけれど、それを一言で説明するのは容易ではない。むしろそれを分析するための本や記事やドキュメンタリーが、この世にいくつ存在するのだろう。
プロデュース力=創出力と定義したとき、ジョブズは秀でた経営者であると同時に、突出した才能をもったプロデューサーだった、と言えばイメージが付く人も多いのではないか。
どうしてヒットを生むことができるのか?と言う問いにかつて、「言語化できないほど工夫する」と答えたことがあるが、多くの人に受け入れられ、ビジネス的にも成功するようなプロダクトや事業を創る場合、その要因はもちろんひとつではない。
「センス」という言葉の背景には、複雑に絡み合った、けれどそれを有機的に、かつ絶妙な配分で紡いだ要素たちが必ず存在する。
つまりセンスの正体とは、「言語化できないくらい多くの小さな仕掛けたちをつむぐ」ことだ。
描いた夢がいつか実現できるように仕掛けておく
たとえば、私がアメーバピグの立ち上げプロデューサーを担当していたとき、開発もデザインもできなかったので私がなにをしていたかというと、そういう仕掛けを仕込むことを日々やっていた。
・ターゲットインサイトの把握
・ターゲットニーズの新定義
・ユーザープラットフォームとの癒着関係
・最小で生みつつも最大に拡張できる初期設計
・フリーミアムモデルながら将来的にマネタイズできる仕掛け作り
・みたことがないけれど万人にうけいれられるクリエイティブ
・テストされたワクワクするユーザー体験
・成功を計測できる指標の設定
・低コストでインパクトのあるPR
当時若かったし、偶発的に作られたものだ、と思われるくらいミニマムスタートから1年半で500万会員くらいに成長したし、その後も数億の売上規模になったり、テレビCMをうつくらいのサービスになったけれど、実は初期設計で狙わないでできた仕掛けは一つもない。
創るべき未来の完成形を強烈にイメージしながら、いかに小さく生んで、完成形につなげるための仕掛けを仕込んでいくのか。
クリエイターチームや、藤田社長はじめメディアを統括していた偉い人や、わたし自身が、いつかこういうことをやりたい、こういう風になってほしい、と描いた夢が、いつかちゃんと実現できるように仕掛けを仕込んでいた。
センスのある仕組みの数は、プロジェクト初期でテコのように効いてくる
プロデュースの仕事は0からの創出か、規模の大きいリブランディング的なポイントでしか、私はほとんど機能しないと思っている。それは、プロデュースにはセンス=初期設計で仕掛けられる仕組みの数が必要不可欠だからだ。
とはいえ、センスは言語化が難しいだけで、言語化できないわけではない。
多くのプロジェクトで仕込むべき仕掛けには、ある程度の型があって、一つでも抜けると致命的な妨げになったりするのだけれど、私自身がセンスの正体を言語化して解いてみるために、これからもこのnoteで少しずつ分解していってみようと思う。
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