#2301167
旧街道をなぞって作られたこの商店街は、クネクネと曲がりくねりながら700メートルも続く。この町に越して来た当初、彼にはそれが物珍しかった。
「ほら、ちゃんと前を見て歩かなきゃ危ないでしょ」。母親に手を引かれながら前を行く女の子がいた。彼女は、雑踏の中を右へ左へピョンピョン跳ねていく。
商店街を舗装する色とりどりのタイルの、赤だけを踏んで歩く。どうやらそんなルールを決めているらしい。「子どもは、何でも遊びにしちゃうんだなぁ」。
自分にも、そんな時代があった。「あの頃より広いはずの世界に生きてるのに」と思う。空空しいジングル・ベルが、彼をますます退屈にさせていた。
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