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香典返しを固辞して

香典返しを固辞して帰宅したアパートの玄関で、私は、ふと我に返りました。「お清めの塩だけは、もらっておけばよかった」。一人暮らしのアパートです。

「キッチンへ取りに行くか」、「そもそも、ウチにはクレイジーソルトしか置いてない」。面倒臭くなって、そのまま部屋に上がり込みました。

「友達の通夜に行ったぐらいで、ケガれるわけないだろ」と自分に説教して。食欲がありません。それでも、死と生を隔てる行為として、鍋に湯を沸かします。

「人は、孤独な旅をしているが、旅の終わりには必ず誰かと出会う」。昔、誰かに聞きました。「彼も最後に誰かと出会えたかなぁ」。湯気の中で、思います。

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皮膜
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