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ケータイの向こうの誰か
ケータイの向こうの誰かと話す君の声は、私と話す声よりぶっきら棒で、私の心は、穏やかでない。言い換えれば、私の知る君よりフランクな君がそこにいる。
ケータイを切った後で、「トモダチだ」と君がいう。だからそれ以上は、深追いをしない。それが誰か、と問い詰める立場に私はいない。
そして私たちは、冬の雨の中、町に出た。深夜に韓国料理を食べて、そして君は、駅で私を見送ってくれた。
それだけでいい。他に何を望む?「愛してる」。乗客がまばらな車内でつぶやいてみた言葉は、今夜、随分と独り善がりな響きをはらんでいた。
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