久し振りに覗いた故郷の町並みは、かつて空き地だった場所に狭小住宅が並び、そのくせ、かつて社宅だった広大な土地が打ち捨てられて夏草が茂っていた。
ちぐはぐなのだ、この町は。かつて通った通学路を歩く。家家の表札を見て回る。そういえば見覚えのある苗字が並ぶ。
かつてよく遊びに行った同級生の家にはデイサービスの看板が下がっていて、かつての同級生の親たちの世代が日がな一日集う場所となっていた。
町も、人も、当然に老いる。その老いていく姿を正面から見据える勇気がなくて、私は、実家を素通りし、オレンジ色のバスに乗ってこの町を後にする。