一通りの説明の後で
一通りの説明の後で、N先生は、付け加えました。「化学療法で生殖機能が低下するといわれていて、若い患者さんの中には、精子凍結される方もいます」と。
大して若くもないEさんは、「その希望は、ありません」と即答します。結婚なんて。まして子どもなんて。でもその後で、その即答ぶりに自分でも驚きます。
「まぁ、お金も掛かりますからね」とN先生に優しくいわれて診察室を出て、誰も知る人のない待合で1人、会計を待っています。
俺は、結局、子どもも残さず一生を終える。そんな今更な感慨にとらわれます。「ここから先は、余生なのだ」と、不意にその時、Eさんは、思いました。
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