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博物館(2)


博物館の周辺の熱狂は、夜になっても収まらず、酒場のTVがボクシングの試合を繰り返し流し、その前で若者たちが何度も祝杯を挙げていました。

私は、同行者の「遊牧民なので、チームプレーは、全然ダメです」という言葉を思い出していました。この国の中で私が抱いていた疑いも、そこにありました。

「1.6人/㎢という、世界で最もまばらな土地で多様な民族の寄せ集めとして暮ら彼等にとって、国というマトマリは、どれほど意味があるか」という疑いです。

この疑いは、でも、彼等の熱狂によって怪しくなってきます。そのあまりに手放しな熱狂のために、傍観者に過ぎない私も、思わず気持ちが高ぶっていました。

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皮膜
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