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満員の電車に揺られながら

満員の電車に揺られながら、窓の外をぼんやり眺めています。オフィスに向かうサラリーマン、通学する学生。日常の風景が目に飛び込んできます。

行きたくて行く人人よりも仕方なく行く人人で、朝の電車は、混んでいます。その時、駅のホームの突端に、カメラを構えた2人の少年の姿を見ました。

ホームに入る下り電車。通勤時間のいつもの通勤電車。私には何らの興奮も、関心すらも覚えない対象に向かって、彼等は無心にシャッターを切っていました。

私は、意外に思い、同時に、日常の中に非日常を、あるいは幸福を見出す能力のことを考えていました。上りの電車は、何事もなくホームを出て行きます。

人生を幸福にする為には、日常の瑣事を愛さなければならぬ。雲の光り、竹の戦ぎ、群雀の声、行人の顔、――あらゆる日常の瑣事の中に無上の甘露味を感じなければならぬ。人生を幸福にする為には?――しかし瑣事を愛するものは瑣事の為に苦しまなければならぬ。

芥川龍之介「侏儒の言葉」)


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