カエルの息子は、親の言い付けを聞かず何でも逆のことをする偏屈者だった。だから親は、いまわの際に「墓を建てるなら山より川の側がいい」と言い残した。
川辺の墓は雨が降れば流されてしまう。だから偏屈者の息子にそういえばきっと山に墓を建てる、と。でも、日頃の行いを反省した息子は、川辺に墓を造った。
それ以来、「墓が流されるのでは」と心配して雨の日にはカエルが鳴き騒ぐ、という。火葬場の近くのバス停で、Eさんは、その昔話を思い出している。
居たたまれず父親の火葬を抜け出して、ここでバスを待っている。最後に会ったあの日、混濁する記憶の中で父親は、「なかよく」とEさんに言い付けた。