幕府の重臣の暗殺の企てが露見して、吉田松陰は、長州から江戸へ送られました。見送った両親は、「企てを白状するな」と息子に諭しました。
自身の信念を曲げず、結局、死罪を言い渡された松陰は、両親に宛てた手紙に辞世の句をしたためます。「親思ふ心にまさる親心けふの音づれ何ときくらん」。
「それは多分、真理なんだろうなぁ」。これが松下村塾です、と見せられた小屋のような世界遺産を覗き込みながら思います。
親が子を思う心は、子が親を思う心に勝る。少し神妙な心持ちに傾きながら、それでも素知らぬ素振りで旅を、親不孝を、続けています。