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体長7メートルのクマさんの体内に

体長7メートルのクマさんの体内にポンポンと子どもたちを投げ込んでいく。それが今日の私に与えられた任務です。

3〜4分経った頃にクマさんの体内に首を突っ込み、飛んだり跳ねたりしている子どもたちをクマさんのお腹にうがたれたスリットから引っ張り出します。

ある子は、上気した顔で「まだやる-」とはしゃぎ、別の子は、2,400ワットの送風機から送られる空気の圧と音にひるんで泣いていました。

抱き上げた子どものどの身体も細作りで、扱い慣れていない私は、それを壊してしまう恐怖におびえつつエアー式トランポリンに彼等を出し入れしています。

赤ん坊がこんなに柔らかいとは思ってもみなかった。これだけ柔らかく世界と接していられることが羨ましくもあり、怖い感じもあった。

(中村太郎「慎ましく世界を破壊すること」)

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