ローリスク・ローリターン

思えば今まで、「進路」というものを、あんまり積極的な理由で考えたことはなかったかもしれない。

この文章は正直言って「贅沢な悩み」だから、読んだ人の気分を害してしまったら申し訳ないと先に言っておく。

中学受験をすると決めた理由はどうだったか覚えていないけど、小学校の環境がそんなに良くなかったとかそれくらいだったと思う。
母校を選んだ理由は「行けそうだったし実際受かったから」だった。もちろん文化祭に興味を持ったとかはあったけど、それだけで言えば他にも学校はあったから、決め手ではなかった。強いて言えば、知ってる先輩がいた(憧れて、とかではなく、知ってただけ)から、くらいだろうか。

東大を目指した理由も、「行けるなら行って損はないから」だった。東大模試の判定はDとかEとかだったから、正直「行けそう」ではなかったのだけれど、気付いたら東大を目指していたから後戻りが効かなかった。まあ「東大以外は浪人する」みたいな強い気持ちはなかった。

進振りで経済学部に行ったのは「失敗してもたぶん大損はしない」からだ。理転して「やっぱり違う」となったら取り返しがつかないけれど、経済学部ならまあ卒業はできそう、という目論見だ。
工学部の某学科とかも真剣に考えていたけれど、あまり先輩から聞く噂はよくなかったし、サークル×2+バイトで忙しかった当時、負担を増やしすぎたくないというのもあった。
結局経済学は楽しかったけど、そこに全てを捧げる気にはならなかったし、かといって就職する気にもならなかったから、進路を切り替えるに至ったわけだ。

それで情報系の、母研究室(と言うのだろうか?)に来たのも「いまどき情報系なら損はしないだろう」という目論見だった。もちろんスマートシティに興味はあったから、進振りのときよりは積極的要因はあったけど、いまから思えばそんなに大きいものではなかった気がする。忙かったとはいえ、もしもっと積極的なモチベーションがあったなら、いろんな大学院を調べていたはずだ。
結局これも、お勉強は楽しかったけど研究は微妙、で終わった。

就職もあんまり積極的なモチベーションではなかった。この会社ならキャリアに損はないだろう、という程度だ。
しかし、配属されてみるとやっぱり「なんか違うなあ、得るものがないなあ」となってしまった。

ふと周りを見渡してみると、人生を積極的なモチベーションで進んでいる人が増えたことに気づいた。
仕事や研究で何かを目指す人。結婚など次のステージを目指す人。今までより目標の幅が広がったこともあり、何かしらかのモチベーションを見出している人が増えているようだ。

「『損はない』で生きてるのに『なんか得るものがないなあ』は当然だ」と、とある人に言われてハッとした。ローリスクで動いてもリターンは少ない。ここからは積極的に動かないと何も変わらない。
とはいえ、今までそういう生き方をしてこなかったから、どうすればいいかわからない。
なんとなく夢はあるけれど、それを実現するルートは全く見つかってない。それでは時間を浪費するだけだ。どうしよう。

そろそろリスクを取ってでもやりたいことを探したい、と思った25歳の夏だった。

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