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一滴の白

色には温度とか質量とかそういった物を感じ取らせてくれる作用がある。

黒は...やっぱり重たい。重みが安心するときも確かにあるけれどどうしても押しつぶされて耐えきれなくなってしまう。


せっかくだからと珈琲に一滴のミルクを落としてみる。

その一滴の白は黒を侵食し、もっと私の様になってしまえと言わんばかりに黒を少しだけ軽くしてしまう。

その開放に、質量の減少に心を奪われてまた一つ、また一つと白を加えていく。これが幸せだ。これが私が追い求めるものだ、と体と心を蝕んでいく。LSDを飲んでいるようだ。それがどの様なものか私にはわからないのだが。


透明度が0%の白を得たい。そう思ってしまう。直接白の明るさと軽さを感じたいと。

黒は何かであって何でもない。自分の汚さも黒の構成する色の一つだと分かっているからだ。黒を黒たらしめて居るのは私と、何か。またその何か。

理解しても尚逃げ続ける。黒からの逃避行の果てに白を求める。

黒は"それ"であって。私ではない。そう、自己暗示をかけつづける。


黒に白を注ぎ続けたとて純粋な白には成り得ないというのに。

それに、気づいてしまっている、そう理解しているというのに。

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