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宿題【4.小夜】

 宿題を、肩肘を付きながら適当にこなす彼女が、窓の方を見ると外はすでに真っ暗になっていた。

 彼女は宿題の手を止めカーテンを閉めようとした。閉める間際ふと窓の外を眺める。
 眼下の街には街灯が煌めき、人々が行き交っている。その光景は彼女には何やら楽しそうに映った。
 自分は小さな部屋の中で苦しみ悶えているというのに、外の街並みや行き交う人々はなんとも幸せそうだ。


 まるで天国と地獄だ。さしずめこの部屋は地獄。宿題と言う地獄の責め苦を受ける私。彼女はそう感じ急に悲しくなってきた。
 天国を見せつける窓にしっかりとカーテンを閉め、悲しみに暮れる彼女は自分を責める宿題の山を確認する。
 するとどうだろう、さっきまで気づいていなかったが、宿題の山が、始めた頃の半分まで減っているではないか。
 彼女は驚き再度宿題の山をしっかりと確認する。減っている。確実に減っている。自分の努力が、地獄の責め苦の山を削ったのだ。


 地獄に射した光明!彼女は歓喜し意気揚々と宿題を再開した。


 そして彼女はこの五分後、忘れていた宿題。読書感想文の存在を思い出し、再び地獄の底に突き落とされるのである。

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