宿題【2.逢魔時】
陽も暮れて、部屋の中は薄暗くなってきた。昼から夜に移り変わる薄紫色の美しい景色は、人の心を奪うようだ。
部屋で宿題に取り組んでいるはずの彼女も例外ではない、窓の外の景色をしばらく眺めている。
しばらく、眺めている。
そう、彼女は現実逃避中だ。
宿題はいまだに山積み、書いても書いても一向に終わりがみえない。
もうやりたくない。終わりの見えない作業に、彼女は嫌気がさしていた。
美しい空を眺めながら彼女は考えた。このまま白紙で提出してみたらどうだろう?
もしかしたら、なんのお咎めもなく先生も笑顔で許してくれるんじゃないだろうか?
そもそも、みんな宿題なんてやってなくて、真面目に取り組んでいるのは自分だけなんじゃないのか?
そんな、あり得るはずのないご都合主義的な考えが彼女の頭をよぎる。
彼女はゆっくりと椅子から立ち上がり、軽く伸びをする。大きなあくびをして、そのままベッドに倒れ込んだ。
瞳をとじて明日のシミュレーションをする。朝礼が終わったあと、先生はこう言うだろう「夏休みの宿題を提出してください」
彼女は待ってましたとばかりに白紙の宿題を提出する。その宿題に目を通した先生は……。
そこまで彼女は想像し終わり、途端にベッドから跳ね起きた。許されるハズがない。先生や、友達の突き刺さる視線までもリアルに想像された。
現実逃避している場合ではない。彼女は机に再度しがみつき、凄まじい勢いで宿題を再開した。もちろん一つ一つ解くようなことはしていない!
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