おばあちゃんのねぎ
ねぇ、おばあちゃん、おじいちゃん。なにやってるの?
そっか、ねぎとってるのか!採れたてのねぎ、生で食べてもいいかな!?
やった!ありがとう!
(しゃりッ)
食べた時、なぜだか目にこみ上げるものがあった。ねぎなんて珍しいものでもないのに。苦くて、でもその奥に新鮮な甘みがあって、おいしくて、何より深かった。太陽を体内に宿したように、温かく、満たされた。
肝臓が悪く、何度も入院と手術を乗り越えてきてるおじいちゃん。腰をほぼ直角に曲げながら、それでも蒸し暑い群馬での真夏の草むしりと耕作をするおばあちゃん。そんな二人を近くで見ていたからかもしれない。
僕の、美味しそうにねぎを食べる姿を見て、二人もとても喜んでくれた。
それが、おばあちゃんのねぎ。
いつだったか放送されていたテレビ番組で、スーパーで選ぶべき野菜の特集をやっていた。その中でねぎの選び方も紹介されていた。
「ねぎは、緑の先部分の比率が低く、白い部分の長いものを選ぶと良い」
こう紹介されていはずなんだけど、その理由を思い出せなかった。
栄養価が違うんだっけな?白い部分のほうが調理がしやすいんだっけな?
そうあれこれ考え出して埒が明かなかったので、聞いてみることにした。
ねぇ、おばあちゃん。
ねぎって白い部分が多いやつのほうがいいんだって。なんでだか知ってる?
「そりゃおめぇ、白いとこのほうがうんめぇだんべや。」
答えは迅速で、明快で、シンプルだった。
なんだ、と思った。そして同時にすごく笑った。
答えなんか、考えなくても心が知ってるものなんだって。急に力が抜けた。
生で食べても美味しくて。
おばあちゃんが腰を曲げれば曲げるほど、空に向かってピンと伸びて。
食べる人を笑顔にさせてくれる。
それが、おばあちゃんのねぎ。
明日はちょっとだけ、自分の感性に素直になってみるよ。