#88 非認知能力は「環境」の産物|子どもの貧困について考える
ポール・タフ(Paul Tough)さんの『私たちは子どもに何ができるのか 非認知能力を育み、格差に挑む』という本の中から、私たち親がぜひとも心に留めておきたい一節をご紹介します。
この本は、「貧困」に苦しむ子ども達の「非認知能力」を高めるために、どのような支援が有効かをまとめた作品です。
訳本かつ研究やリサーチをベースにした硬派な内容なので、読解に多少の労力が掛かりましたが、
貧困に苦しむ子ども達が、どれだけ不利な立場に立たされているか理解できただけでも、読んでよかったと思います。
おそらく教育に従事する方たちが主な対象読者ではありますが、親御さんにも役立つ内容がたくさんありました。
その中でも「なるほどねぇ」と思ったのは、次のような考え方です。
「非認知能力」は「スキル」ではなく「環境の産物」。
「能力」とつくから、具体的なメソッドか何かでそれらを伸ばせるような気がしてしまいますが、最初に働きかけるべきなのは「子供自身」ではなく、「環境」だといいます。
では、どのような環境がいい、あるいはよくないのでしょうか?
食事や医療といった健康面での環境、本や知育玩具のような知的刺激ももちろん大切ですが、環境による影響の中で子どもの発達を一番大きく左右するのはストレスです。
そして、ストレスを生み出す一番の要因は人間関係、しかも家庭が極めて重要です。
子どもにとって一番重要な環境要因は「親」。
言われてみれば確かにそうかもしれませんが、親である私自身の言動が子供にとっての「環境」になるとは考えたことがありませんでした。
本書のテーマの一つは「貧困」であるため、親自身が貧困に苦しみ、過度のストレスに晒さらされていると、子供に対して配慮の行き届いた、落ち着いた反応を示すことができなくなるといいます。
特に就学期前の子ども達は「親」という環境の影響を強くうけます。
「貧困の連鎖」という言葉がありますが、「非認知能力」に関しても、こうした負の連鎖が起きるんですね。
本書ではここから、具体的にどのような支援が効果的なのか検証していくのですが、専門スタッフが親に対して
「共感や励ましを通して、子どのとの関係について気を楽にさせる」
「親として"できていること"を認め、安心感を持たせる」
ことで、親が望ましい行動を後天的に見につけることは可能だとしています。
「貧困」には該当しなくても、小さな子ども達の子育てで、親自身が追いつめられてしまうことは多々あると思います。
もし身近にそういったパパ・ママがいたときに、専門的な支援ではないにせよ「話しをきいてあげる」「共感や励ましを示す」くらいならできそうです。
『私たちは子どもに何ができるのか 非認知能力を育み、格差に挑む』の詳しい解説記事も書いていますので、興味を持ってくださった方はこちらものぞいてみてください。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。