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金曜ドラマ『妻、しょうがくせい…』

ここ最近のこの違和感はなんだ、、。あんなにズボラだった妻の様子がおかしい。いままでは家事もろくにせず、家中散らかったままだった。仕事から帰るとたいていはソファに寝転がり、ドラマをみながら煎餅をかじっていたあの妻が…だ。
料理もまともにせず、スーパーの惣菜かコンビニ弁当、レトルトしか出てこなかった我が家の食卓のこの変わりようはなんだ。

急に自然食にこだわりだし、ミニマリストとか言って家中のものを断捨離しだした。

「あなた、身体は冷やさない方がいいわよ」

そういって今夜の夕食も、すごく手の込んだ薬膳のスープだった。生姜とニンニクの香りがすごい。たしかに身体は温まるし、味も最高にうまい。

妻はいつのまにこんな料理を覚えたのだ?いままで俺のことを「あなた」なんて呼んだことなんてなかったのに人が変わったように優しい。

明くる日も温活だといって、生姜たっぷりの薬膳カレー。このジンジャエールも手作りだという。付け合わせには生姜をはちみつで漬け込んだ生姜スライスだった。
温活とはすごいものだ。身体がほかほかする。いや、そんなことかんしんしている場合ではない。
俺はだんだん妻のことが怖くなった。きっと何か別の人格が妻に乗り移ってしまったのだいう疑念がどうも拭えない。
試しに思い出話をしてカマかけても、スルっと苦笑いをしていつもかわされてしまう。きっと「この妻のカタチをした何者か」は何も覚えてないんだろう。こいつの目的は何なんだ!

ズボラでもいい、俺に優しくなくてもいい。もとのあの俺の妻をかえしてくれ!

次の日、妻のような何者かはまた自然食のお店で大量の生姜を買ってきた。なにやら冬に向けて生姜シロップを作るんだと意気込んでいた。

大きな鍋で何時間も何時間も生姜を煮る妻。その目は何かに取り憑かれたようにも思え狂気を覚えた。

「ほら…できたわよ…生姜シロップ...身体..あたたまるわよ。
一生懸命作ったんだから・・・たくさん飲んでね、、あ、な、た」

その狂気の顔が迫ってきた。そして妻の身体からすごい匂いが立ちこめた。

・・・妻、しょうが臭え…

金曜ドラマ『妻、しょうが臭ぇ』
- 完 -


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