猫記録2-① チャー坊(茶トラ)
僕は最近少し調子が悪い。なんとなくだるいし目ヤニで良く見えない日もある。だから公園の一番奥の方に隠れてぐったりしている。もしかしたら先日のものすごい雨の日にたくさん濡れてしまったからかもしれない。
相変わらずごはんをくれる人は毎日置いて行ってくれるけれど、あまりその人たちに甘えてぐりぐりする元気もない。本当は人間が好きなのに。周りのみんなはえさをくれる人たちとは別にいじわるする人たちがいるという。石を投げたり、叩いたり、追いかけまわしたりする。僕はあまりそういう嫌な思いはしたことが少ない。
そりゃこの公園で生まれて育ったのだから、ここでの生活も長いのだけれど、幸いなのか、ぼーっとしているからなのか、あまり人間を嫌だと思ったことがない。だからぐりぐりされたり撫でられたりするのが大好きだ。お母さんのお腹に囲われないようになってから、人間のその手が大好きだ。
妹と遊ぶのも好きだ。他の猫と遊ぶよりも好き。だけれど最近はそれも疲れる。これが初めてではない。何度か辛い思いをしている時にやさしい人間に病院へ連れて行ってもらい、又ここへ帰ってきている。雨風をしのぐ方法は生まれながらに身についているし、とりわけ夜の公園は静かでよい。
ある日女の人が又具合の悪くなって弱っているぼくを病院へ連れて行ってくれた。その人は暖かく、いつも餌をくれる人たちのひとりだった。お医者さんも人間、ちょっと薬臭いけれど好きだ。病院だからといってあまり怖いと思ったことはない。病院からの帰り道、今度は公園へ帰らずその人の家へ連れていかれた。
びっくりした。そこには数匹の猫がいて、どの子も初めて見る顔だった。ケージに入れられるのは好きではないが、安心感もあった。この家は猫がたくさんいるのに居心地がよい。何より熱くも寒くもないし、雨も降ってこないし風もない。まっ、このままでも良いかなとぼーっと感じていた。
それが、なぜかそこにいた数匹の猫といっしょに車に乗せられ公園へやってきた。心地よい日で、周りの木々や芝生の匂いに懐かしい公園を思い出した。いろいろな人が僕をのぞき込んではお世話をしてくれていた人と話をしている。近寄ってくる人間は昔公園で遭遇したたくさんの人とはちょっと違う感じがした。なんというか愛情にあふれているというか、敵意がないとか。
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