小田桐圭介「あたし、時計」 電脳マヴォ漫画分析002

(この分析シリーズは、主として歴史寓話論による分析を行う。それは、「戦後日本にとって重要な歴史解釈・歴史認識や一定期間・範囲の国際・国内情勢をプロット化し、そこに登場する個人・各組織・諸集団やそれらに内在する諸特徴をキャラクター化し、それらを偶然として退けられてしまう可能性を排除するべく(物語内外問わず)様々な手法によって歴史や寓意と作品との関連性に向けて鑑賞者への注意喚起を企てつつ、物語全体を寓意として設計・解釈・構成する試み」と説明した風刺寓話の仮説に準ずるものである{歴史寓話論に関する関連リンクは下記})

(この記事は、電脳マヴォに掲載中の小田桐圭介「あたし、時計」のネタバレを含みます。予めご了承ください。無論、作品を先にご覧になられる事をお勧めします)

前回はこちら。


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1ページ。円形の時計、帽子は日の丸のイメージ。リボン=ニホン。

のっぽの「の」はにっぽんのの「に」と同じナ行。「ん=N」とも関係する。「っぽ」が一致。

柱、木のような高さと形状は神道的神性の寓意。またランドマーク、シンボルとも言えるそれは天皇のあり方と一致する。


2ページ。時を刻む。天皇が行う儀式は日時が決まっている。

山に囲まれた小さな村。外部との隔絶は鎖国状態を、「村」の木偏が天皇制を示す。村のみんなを見守る事が、国民と天皇の関係を示す。


3ページ。一年を通じて「時を刻む」だけの存在。村人=一般的な国民とは異なるもの。


4ページ。注目の的。皇室は何かと耳目を集めるものだ。


5ページ。曲がって子供の高さまで降りてくる。天皇と国民との対話。陳情。


6ページ。呼びかけに応えてくれただけでも嬉しい。素朴な感謝の意。


8ページ。村人の態度。天皇制に対する意識の違いと、その行為の規制・制約のかけ方。


9ページ。月。円形。


10ページ。デジタル時計は「日」に似たデジタル数字の「8」の形を常に潜在させ、内包していると言える。

時間論議。過去、歴史との関連を示す。


11ページ。生まれながら不可逆、前に進むことのみが本文。過去の忘却、抑圧による規制。歴史的経緯が伝達されておらず事実が隠匿されている。


12ページ。相談、心の拠り所。特に「心」は日本の寓意であるから、日本の日本たる根拠を求めるという事。


13~14ページ。村の一員としての役割と、個人主義。共同体主義か自由主義か、国家体制に通ずる。村人の怒りは反秩序・体制転覆の思想に対するものだろう。いかにも日本らしい村社会ぶりの表現というところか。


15ページ。歌。祝詞、朗誦が歌うようである事からだろう。また「歌」の「可」は日の丸の変形と欠損、「欠」は大日本帝国の「大」の変形と取れる。


17ページ。すまなかった。日本の寓意としてどの点からどの立場への謝意なのか、多重化(もしくは曖昧化)している。


18ページ。嵐、風、木片、落雷。「嵐」も含めて「風」は神風を連想させるもの。木片は「木」、落雷も「落」の字は艸部で植物性、「雷」は陰陽五行では木気。また雨冠なので「アメ」リカとの重合性もある。


20~22ページ。落雷、時報。敗戦(核爆弾?と詔勅)。


23ページ。監視しやすい。敗戦後の監視=占領下、戦後日本(この場合、山に囲まれた村は世界全体に、村人は諸外国にあたるだろう)。


22~25ページ。違和感からの遡及。歴史的事実の追求、過去を求める事。また同時に読者が歴史寓話に導かれていく発端でもあろう。


27~28ページ。村八分、掟、疎んじられる。鎖国、孤立、秩序、国家的序列。


28ページ。広い世界での挑戦。勢力拡大の意図。


30~33ページ。 逆転負け。


32ページ。姉。循環・反復型。また戦後(時計化以後)からの回顧型でもある。


35ページ。笑顔。平和ボケ。


35~39ページ。歌。敗戦の自覚とその寓意的表現の氾濫。あるいは敗戦による影響の長期的継続をも表す。

困る。「困」は「口」、漢字における円形の代用となる四角形から、日の丸を示すものと、「木」の部分に分解可能。

泣く。悲しみ(敗戦と喪失感の感情だろうか)。

狂う。獣偏に「王」。アルファベットの「O」にも通ずるが、文化進化論を進化論的なメタファーで示すとき、「人間=欧米列強」に対して「獣の王=大日本帝国」となるのではないか。


40ページ。休まず。多忙。また「木」を含む「人」、として天皇を示すが、日本の「本」と「木」の類似を前提すると「日本人」を示すかもしれない。

ちょこん。2文字目の小書き、4文字目の「ん」を「ジャパン」に合わせているのか。

風に飛ばされる帽子。「帽」にも「日」の字があるが、「髪=神」を隠すものでもある。かつての天皇制と敗戦の自覚の象徴的表現か。




(続く)

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歴史寓話論関連リンク


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比那北幸@批評
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