漫画紹介「するめいか」
「するめいか」は2013年まで幻冬舎の雑誌にて連載されていたギャグ漫画で、作者は「異世界のトイレで大をする」「うわばきっず」のルーツ先生です。ルーツ先生のデビュー作とも言えるこの漫画は、魅力に溢れています。
・あらすじ
亀戸に住む女子高生4人が主軸のギャグ漫画。
……と、一話完結型のギャグ漫画の中でも特に縦軸が存在しない類の漫画で、内容はギャグ特化です。
・魅力その1、息切れしそうなギャグ
この漫画、非常に濃密です。
何が濃密かというと、もちろん「ギャグが」という事なのですが、単に一話辺りのギャグの数が多いというわけではありません。
なんというか……緩急がほとんど無いのです。緩急をつけているエピソードもあるにはあるのですが、基本的にほとんどの話が常に全開の速度で進むため、非常にスピード感のある笑いが楽しめます。
反面、スピード感が強すぎてついていけない時もあります。シュール系のスピードタイプなギャグ漫画にありがちな読み疲れです。読むのにエネルギーを消費する類の漫画ですが、その分対時間効果が非常に高いです。読み返しも有効に楽しめます。
・魅力その2、シュールなキャラ
この漫画、一話完結型で縦軸が無いためか、キャラクターの強さが光ります。主要キャラ四人のうち、主人公の三木はツッコミキャラとして終始しますが、他の三人……というかゲストキャラも含めたその他全員が非常に強いキャラクター性を宿していて、それが笑いに繋がります。
例えば主要キャラの一人である楓は、「常に頭に矢が刺さっている不死身キャラ」という異常なキャラ付けをしていて、そのため会話の中で突然死に至るようなダメージを負ったりします。この「突然」というのは文字通り本当に突然であるため笑えるのですが、それは大オチではなく話の途中の一アクセントのギャグに過ぎないため、すぐにそのまま話は進みます。状況も含めて非常にシュールなその流れは、楓が「不死身」であるからこそ成り立つ展開というわけです。
キャラクターがギャグを演じるというよりも、ギャグのためにキャラクターが存在しているあの感じは、ギャグに対して非常に真摯かつストイックな姿勢が垣間見えて、非常に好感が持てます。
そしてだからといって、キャラがぞんざいに扱われるという事はありません。
もちろん作中にて何度も死に近いダメージを負っている楓の扱いはぞんざいといえばぞんざいですが、それでもいたずらにキャラの魅力を損なうような展開はありません。
……いや、シュールギャグなので全編キャラが崩壊しているだけという見方もありますが。
・魅力その3、型に囚われないギャグ展開
この漫画は総じてシュール系ではあるのですが、それでも変化をつけてきます。話の展開そのものはまともでセリフだけがシュールな場合、大ゴマでの顔芸など絵面がシュールだったり、ツッコミ不在で淡々と話が進むタイプのシュールさだったりと、シュールシュールと一口に言っても種類が豊富なのですが、いろいろなパターンを突いてくるので面白いです。
ルーツ先生独特の言い回しも癖になりますし、意外と十把一絡げの短編ギャグではありません。この辺りは、読んでみてから判断していただきたいです。
総評
するめいか、面白いです。この間全巻入手したのですが、良い買い物だったと思います。
なお、公式にメディア進出しているわけではないのですが、ルーツ先生本人が動画サイトにて「自主製作アニメ」というかたちでするめいかのアニメを投稿されています。内容は漫画と全く異なるのですが、これはこれで面白いので、漫画を買うのはハードルが高いと感じる方は、まずはそちらの視聴をオススメします。
私的好感度:86/100、オススメ度83/100