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漫画紹介「ドラゴンボール超」
※再掲載記事です。
ジャンル:バトル、既刊13巻
「ドラゴンボール超」はVジャンプ連載、鳥山明先生原作のバトル漫画です。「ドラゴンボール」の続編として、とよたろう先生が作者を務めています。
・あらすじ
魔人ブウを倒して数年……戦う敵を失って呑気に暮らすかつての地球の救世主、孫悟空は「破壊神」の存在を耳にする。自分よりも強い存在が地球を脅かすという現実が、平和ボケしていた戦闘民族の血を騒がせる。
ドラゴンボール完結から二十年、新たな物語が始まる。
・魅力その1、常軌を逸したパワーインフレ
「ドラゴンボール超」の物語は、原作以上に一つ一つのエピソードが短く、原作以上にパワーインフレのサイクルが迅速です。強い敵に苦戦して、強くなって打ち勝って、そしてまた強い敵と戦うという少年漫画の王道サイクルをなぞった物語はバトル漫画として魅力です。
ただしその分、別の方向での問題も起こります。インフレについていけなかった味方の退場です。パワーアップの形態がほぼほぼ超サイヤ人での新形態に固定されてしまった兼ね合いもあって、パワーアップするのは大抵悟空かベジータのみになって、昔からの頼れる仲間であるピッコロやクリリンなんかはすっかり戦力外です。もちろんそれは原作からなので仕方が無い側面もあるのですが……彼らが戦力外だという認識のままに動かして、結果的に原作よりも情けない活躍をさせられる姿は少し悲しいです。
でも昔の劇場版のクリリンの扱いを見る限り、昔からそうだったのかもしれませんね。弱者に厳しいドラゴンボール。だからこそ強者に華が見られるのです。
・魅力その2、こちら側の特権はなし
ドラゴンボールという物語は、力と力のぶつかり合いというイメージが強い古風なタイプの漫画ですが、その実味方側は結構いろいろな方面の特権を行使して、半ばずるいとさえいえる方法を用います。タイトルの「ドラゴンボール」がいい例ですね。他にもデンデの回復能力や界王神様の超能力、タイムマシンでの歴史修正にポタラやフュージョンといった合体技など、数を挙げればきりがありません。
何より修行によって力を増して強くなるというのは、味方側だけの特権でした。ボスは強いまま登場し、さらに強くパワーアップしていく……と、そういう様式でした。
ですが「ドラゴンボール超」においては、敵側もその特権を惜しみなく使ってきます。敵は当然修行をして強くなった猛者ですし、合体も使用します。
最たる例が「未来トランクス編」でしょう。敵側は「超ドラゴンボール」で身体を得て、タイムマシンで歴史を変え、あまつさえポタラで合体までしてくるという反則技のオンパレード。まさに敵側の気分を味わっているようです。こういう感覚は新鮮ですね。
・魅力その3、昔ながらの要素のリスペクト
「ドラゴンボール超」では、元祖ドラゴンボールで懐かしかった要素が盛りだくさんです。ピラフ一味のレギュラー化、魔封波の再登場、亀仙人の強化などがそれにあたるでしょう。インフレが激しい反面、そういう方法で原点回帰をするのは面白いです。
ただし欠点として、この場合パワーインフレが崩壊します。魅力その1でパワーインフレを魅力としておきながら矛盾した言い分ですが、要するに一部のキャラだけが不自然に強くなってしまうという現象です。亀仙人が最前線に出るのは展開としては面白いのですが、物語全体でみると辻褄があわなくなります。
とはいえバトル漫画というのは、大なり小なり矛盾が伴うもの。世代が広い読者側への配慮があるいうのは、それだけでありがたいというものです。
総評
ドラゴンボールの続編というのはとても嬉しいですが、テイストは大きく変わっています。とはいえ別の味わい深さもしっかりあると思います。正統派続編であり、「ドラゴンボール」好きなら手を出しておきたい逸品です。
私的好感度:41/100、オススメ度:18/100