DJ配信イベント“The Naya”を支える照明技術③本番までの間にどうやって照明エフェクトを作りこむのか?(part3/3)
この記事ではDJ配信イベント「The Naya」で使用した照明技術について紹介します。
前回の記事はこちらをご覧ください。
DJ配信イベント“The Naya”を支える照明技術②200m超のLEDテープをどうやって設計・施工するのか?(part2/3)
まず、前回までのおさらいをしていきましょう。
part1 納屋で光っていたものの正体を解説した
part2 納屋に200mのLEDテープを張り巡らせるまでの苦労を語った
200mを超えるLEDテープを貼り終えたのは、The Naya本番のたった2週間前でした。当然、LEDテープを納屋に貼り終えるまでは、影も形もないただのLEDテープのリールが材料として鎮座しているだけでした。
納屋がどのように光るかは、実際にLEDテープを貼り終えた現場でなければわかりません。現場が仕上がってから納屋に入り浸って、2週間でエフェクトを作りこむのは時間的に至難の業です。
かといって、イメージが虚無なところから妄想でエフェクトを作りこめるほど、プロではありません。というか、実は今回初めてLEDを光らせる素人です。
ではどうするかというところですが、パッと思いつくのは
「MADRIXの信号を受けて設計書どおりに3D空間で光る照明シミュレーターを作ったら、施工終わる前にエフェクトの研究ができるのでは?」
誰しもが思うことです。そう、あったらいいねなんです。が、既存製品を調べまくっても、そんなものはないわけです。ではどうするか。
実装しちゃいました。
実装した「The NAYA.exe」は、MADRIXから放たれたArtNetフレームを、Unity上に再現した納屋のLEDテープ上で光らせる代物です。
「The NAYA.exe」は、UnityとC#を使って実装しました。VRChatでUnityを触っておいてよかった。
納屋に張り巡らせた29本のLEDテープを、Unity上で同様に配置して構築しました。スナック間隔で実現できるデジタルツインです。
特筆すべきはその物量です。納屋には29本のLEDテープがあり、1本のLEDテープに、約130~170個のLEDがついているので、Unity上には4000を超えるLEDオブジェクトが配置されることになります。
このLEDオブジェクト一つ一つに、Unity上の毎秒30フレームぐらいで受け取ったArtNet信号をDMX信号に変換したうえで、DMX信号をRGB値としてマテリアルの色情報に反映し光らせていきます。
4000×30フレーム/秒なので、一秒に12万回、独立したLEDオブジェクトが更新されることになりますので、適当に書いたコードだと、当然、激重になります。
御多分に漏れず、適当にコードを書いたので、最初は2フレーム/秒ぐらいしか出ませんでした。チューニングして20フレーム/秒ぐらいになったので、実用には十分耐えうるようになりました。
そんなこんなで、本番直前まで山梨でプロレタリアートをやりながらも、照明エフェクトを事前に仕込むことができましたので、無事、The Nayaを終えることができました。
ということで、前回の投稿から7か月寝かせた帰結でもあるのですが、7月9日(土)にThe Naya Vol.2を開催します!なんと!世界のShingo Nakamura と Digital Logicsが出演しますので、万障お繰り合わせの上ご視聴くださいませ。