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小刀で鉛筆を削る

祝日のお祭りで、民家園に遊びに行って来ました。

藍染
紙漉き
竹細工
鋳物
木工
蕎麦打ち
包丁研ぎ
果物の販売
などなど

むかし懐かしい暮らしを説明したり
手作りの良さを体験したりと
民家の建ち並ぶ敷地内に、多くのひとが出掛けてきていました。

年齢層も様々で
リュックを背負った20代の男の子の姿も。
熱心に見学して歩いていました。

「きみ、なかなか詳しいねぇ」
「はい。再来年から宮大工になるんです」
「ほお。ここにはね、宮大工出身のひとも数人いるんだよ」

なんて会話も聞こえてきました。

再来年から宮大工になる…
一瞬、わたしも青春時代に引き戻された気持ちになりました。

「わたしたちは、望んだもの何にでもなれる!」

そう信じ切っていたし、大人に反対されてもその道を進んだ級友もあり
夢を手に入れたひともいるし、思いがけない人生を歩いた人も…
人生って面白いなぁ。
死ぬまで答え合わせはできないんだろうなぁ。

そんなことを考えながらブラブラ歩いていたら
可愛い木のサックの付いた小刀を売っているのを見つけました。
これは欲しい。

「今の子どもは鉛筆を削れないでしょう。だから、削ってほしくて子ども用に作ってみたんですよ。小さな刀を」
「ああ、ほんとうにそうですね。わたしは子どもの頃に家じゅうの鉛筆を小さな刀で削っていました」

そう、子どもの頃は刃物に憧れましたが
指を切るので母親から厳重に注意されていました。
そんな中で、唯一、簡単に許されたのは
小刀で鉛筆を削ること。

新聞紙を広げた上に
先の丸くなった鉛筆を並べて
1本づつ、無駄のないように削る。
その作業を、傍らにいる母親はずっと見ていました。

鉛筆を小刀で削るのは
慣れない小さな指には危なっかしい作業ですが
大人がずっとそばにいて見てあげれば
案外、子どもは慎重で
怪我をすることもなく上手に削ります。

1本1本丁寧に削る
黙って削る。
少し長い時間かかります。
母親の想い出の中の一つとして
無言だけれど、忘れられないシーンになりました。

その後、親戚からのクリスマスプレゼントに
手で回すタイプの鉛筆削り器を買ってもらって
妹と二人で「すごい、すごい」と騒ぎながら鉛筆を削りました。



昨日、職場に小学生の女の子が遊びに来て

「わたしはとてもいそがしい。おとうさんにレゴを買ってもらったんだけれど、組み立てる暇がないから本棚の上に放りっぱなしにしてある」

と言うので

「あら!今の小学生がそんなに忙しいなんて、知らなかったわ!」

と答えたら

「1週間習いごとでいっぱいなの。英語でしょ、そろばん、ピアノ…」

学校の宿題もあるし、確かにとても忙しそう。
まるで、大人の愚痴と一緒です。

「仕事もあるし、家事もあるし、あれもこれもあって
買ったDVDもまだユックリ観れてないよ!」
って感じでしょうか。


子どもの頃
「外で遊んできなさい」と家を追い出されて
ひまを持て余しながら木登りなどしていた子ども時代が懐かしい。

親も子も、あの時くらい暇でないと
鉛筆を小刀でショリショリ削る素敵な時間は過ごせません。
親が手出し口出しをしないで傍で見ているという
贅沢な作業でした。


ちょっと洒落たグリーンの柄にブラウンのサックの付いた小刀は
机の上に飾りました。

さっき、リンゴの袋を開くのに使ってみたけど
なかなか切れ味も良くて便利です。


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